近年、気候変動によって世界中で異常気象が頻発しています。日本でも線状降水帯による大雨や、突発的なゲリラ豪雨により、多くの地域で記録的な浸水や冠水が発生し、経済活動や多くの人々の生活に深刻な打撃を与えています。
こういった浸水状況を確認するため、担当者が道路や施設を巡回している自治体・企業は少なくなく、監視地点が多いほど人手が必要になり、夜間や悪天候時には巡回する担当者の安全確保も課題になります。
浸水センサは、設定した高さまで水が達したことを検知し、その情報を遠隔地へ送る機器です。低消費電力の通信と組み合わせれば、道路、アンダーパス、工場、物流倉庫など、土地の特徴問わず、複数地点の状況確認に活用できます。これにより、早急な実地確認と確認業務の軽減につなげることができます。
INDEX
浸水と冠水の違い
道路や家が水に浸かってしまう災害(水害)を指す言葉として「浸水」や「冠水」などが使われます。これらは一般的に、どの場所が水に浸かっているかによって使い分けられています。
浸水とは

家屋や建物内が水に浸かる状況を指します。河川の堤防から水があふれたり、集中豪雨などによって排水が追い付かず家屋やその他の建築物が水に浸かる事象です。 「台風で家が床下浸水した」「船の底に穴が開いて浸水してきている」など、建造物や機械などの物(モノ)が水に浸かる状態を表しています。
冠水とは

田畑や道路など、普段は水に覆われていない土地(主に屋外の地面)が水に覆われている状態を指します。 「洪水で作物が冠水被害を受けた」「道路が冠水した」などのように表現されます。
内水氾濫と外水氾濫の違い
浸水や冠水を引き起こす水害は、発生のメカニズムによって大きく「内水氾濫(ないすいはんらん)」と「外水氾濫(がいすいはんらん)」の2種類に分けられます。
内水氾濫とは:都市部で多発する「内側」からの浸水
内水氾濫とは、ゲリラ豪雨などの短時間の激しい大雨に対して、下水道や排水路の処理能力が追いつかず、雨水が排水できずに市街地に水があふれ出す現象です。
河川の堤防から水が溢れなくても発生するのが特徴です。地面の多くがアスファルトで覆われていて雨水が土に浸透しにくい都市部で起こりやすく、河川や沿岸といった水辺から離れた場所でも発生するため注意が必要です。
外水氾濫とは:河川の決壊による「外側」からの浸水
外水氾濫とは、大雨などによって河川や用水路の水位が急激に上昇し、水が堤防を越えたり、決壊したりして、市街地へ一気に水が流れ込む現象です。
主に河川の周辺で発生する傾向があります。大量の泥や砂を含んだ水が流れ込むため、住宅が押し流されるなど物理的な被害が大きくなりやすく、復旧にも時間がかかるという特徴があります。
水害対策と課題
浸水被害の現状
日本の多くの河川は短く、また、急峻な地形に位置していることから、少量の降雨でも水位が急速に上昇しやすく、水害が発生しやすくなっています。都市部でも、近年、突発的な豪雨により排水が追い付かず、浸水被害の発生頻度と規模が増加しています。過去10年間では国内の98%の市町村にて水害、土砂災害が発生しました。
【参考】応用地質株式会社『目からウロコな防災メディア「防災・減災のススメ」』
異常気象と水害対策
異常気象は、予測が難しく突発性も高いため、水害対策としては事前の準備が不可欠です。従来から行われている水害対策として、河川の堤防の強化や拡張、排水機能の向上、調節池の設置などがあります。また、避難計画の策定だけでなく、誘導計画の策定、水位計や河川ライブカメラなどによる水害状況の把握や水害情報の迅速な発信、地域住民への防災教育も積極的に行われてきました。これらの対策は、一定の効果を挙げてはいますが、未だに多くの課題が残されています。たとえば、堤防や排水設備の設計が古く、現在の気候状況に適合していないことが挙げられます。
また、下記のような課題点も挙げられます。
- 旧来のセンサやライブカメラなどの導入コストが高額で2級河川以下の水位監視などが不十分
- 浸水状況の把握は人の巡回などに頼っている部分が多く地方公共団体の地域の浸水状況を面として捉えにくい
従来の「事後対応」から被害を防ぐ「事前防災」へ
これまでの水害対策は、浸水が発生した後に現地へ向かう「応急対応」や、被災後の「復旧対応」が中心でした。しかし、被害が発生してからの対応では手遅れになる可能性があります。
そのため国においても、発災後の対応にとどまらず、平時からの「徹底した事前防災」や、デジタル技術を活用した迅速な初動体制の構築を重要施策として推進しています。
水害対策における事前防災では、浸水が本格化する前の初期段階でリアルタイムに危険を検知・把握することがひとつのカギとなります。「浸水前のタイミングで止水板を設置する」「危険なアンダーパスを事前に通行止めにする」「地下施設への避難をいち早く呼びかける」といった、計画的かつ迅速な初動対応を可能にすることこそが、被害を最小限に抑える事前防災の実現につながります。
【参考】内閣官房 防災庁設置準備室『事前防災の推進 防災対策実施』
浸水/冠水検知の重要性
浸水/冠水検知センサとは?

浸水/冠水検知センサは、水位が異常に上昇していることを検知するための装置です。これらのセンサは、河川付近や道路、アンダーパスなどの地点に設置され、水位の上昇をほぼリアルタイムで監視することができます。検知されたデータは通常、監視システムに送信され、即時の分析と対応が可能となるため、迅速な避難指示や対策の立案に役立ちます。
浸水/冠水検知センサの分類
浸水/冠水検知センサの分類は下記の通りです。
▼ 検知方式
| 検知方法 | |
| 電極式 | 電極が水に触れて電気が流れることで検知 |
| 音波式 | センサの音波が水面に反射する時間で検知 |
| 電波式 | センサの電波が水面に反射する時間で検知 |
| 圧力式 | 増水による水の重さ(圧力)で水位を検知 |
| 接触式 | センサ自体が直接水に触れることで検知 |
| フロート式 | 水に浮かべた浮き(フロート)の位置で検知 |
▼ 通信方式 (データ送信方法)
| 通信方式 | 通信コスト | 消費電力 | |
| LTE | 高速データ転送(数百Mbps)、低遅延な長距離通信方式。無線局免許が必要なライセンスバンド | ×(高) | ×(大) |
| LPWA | 低速(100bps程度)な長距離(数十キロメートル)無線通信。公衆網の通信環境を利用 | 〇(低) | 〇(小) |
| Bluetooth | 中速(数Mbps)、短距離(数十メートル)無線通信 | 無 | 〇(小) |
浸水/冠水検知システムとは?
浸水/冠水検知システムは、複数の検知センサからのデータを受け取り、分析、状況の把握、避難誘導や被害状況の把握に役立てるシステムです。このシステムはセンサからのデータを集約し、水位の異常を検出した際には、自動的に警報を発することができるものがあります。また、システムは地理情報システム(GIS)と連携して、浸水予測や被害予測マップの生成に利用することも可能です。これにより、具体的な対策の計画と実行が可能になり、防災活動の効率が大幅に向上します。
国土交通省の取り組み「ワンコイン浸水センサ実証実験」
国土交通省では、低コストで効率的な浸水検知システムの普及を目指して、「ワンコイン浸水センサ実証実験」を行っています。この実験は、一般的な浸水センサよりもはるかに安価なセンサを用いて、広範囲にわたる検知ネットワークを構築することを目指しています。ワンコイン浸水センサは、その名の通り、非常に低価格で製造され、多くの場所に容易に設置できるため、地方公共団体でも導入しやすくなっています。この取り組みにより、広範囲での早期警告システムの実現が期待されています。

【参考】加古川市プレスリリース『「ワンコイン浸水センサ」を用いた広域防災の実証』
複数地点の監視に浸水センサが使われる理由
現地巡回の負担と安全上の課題
道路、アンダーパス、河川周辺、地下施設などの複数地点の確認を人の目だけに頼ると、巡回時間が長くなります。豪雨時や夜間の巡回では、道路冠水や視界不良などへの安全対策も必要です。
遠隔監視を導入しても、現地確認が一切不要になるわけではありませんが、優先して確認すべき場所を絞る材料として利用できます。
点ではなく全体の被害状況を把握する
水位計やカメラだけでは、離れた道路、排水路、施設の浸水状況までは分かりません。浸水センサを複数地点に置けば、どの地点でどのくらいの水が検知されたかを一覧で確認できます。自治体では通行規制や現地確認の優先順位、企業では設備停止、製品移動、車両退避などを判断するための情報になります。
都市部の内水氾濫と多地点監視
短時間に雨が集中し、排水能力を超えると、河川から離れた道路や地下空間でも浸水することがあります。こうした内水氾濫では、被害が特定の場所に集中するのではなく、「すり鉢状になった地形(窪地)」「アンダーパス」「地下鉄や地下街の入り口」「半地下の駐車場」など、条件の悪い複数の地点で同時多発的に発生しやすいという点です。被害が広範囲に分散するため、どこで浸水が始まっているのかを人の目で素早く把握することは困難です。
利用例・ユースケース
浸水/冠水検知センサは、地方公共団体、保険会社、不動産会社など多様な分野での活用が可能です。以下にそれぞれの分野での具体的な活用例を説明します。
自治体
近年多発するゲリラ豪雨の際、自治体ではアンダーパスや河川周辺、内水氾濫が起きやすい低地といった危険箇所を職員が巡回して確認します。しかし、限られた人員での対応には限界があり、夜間や悪天候時の巡回は二次災害のリスクも伴います。浸水センサを設置すれば、役場などの遠隔地から複数地点の状況をリアルタイムで把握できるようになります。危険な現地巡回を減らしつつ、通行規制や避難指示などの初動対応を安全かつ迅速に判断するための情報源となります。
工場
工場において、電気室や受電設備、高額な製造設備が水没してしまうと、長期間の稼働停止と甚大な経済的損失に直面します。他にも、地下や敷地内の低地は、内水氾濫によって従業員が気づかないうちに浸水が始まっているケースもあります。重要設備の周辺や水の侵入経路に浸水センサを配置しておくことで、浸水の兆候を早期に検知できます。アラートを受け取ってから止水板を設置したり、設備を安全に緊急停止したりと、被害を最小限に食い止めるための初動対応に繋げることができます。
物流倉庫
広大な敷地を持つ物流倉庫では、各所の状況を隅々まで常時監視することは困難です。大雨によって床面が浸水すれば、保管している商品が汚損したり、トラックの立ち往生を招いたりする恐れがあります。浸水センサを活用することで、施設内のどのエリアが浸水しているのかをいち早く察知できます。この検知情報を活用し、商品を移動させたり、トラックを高台へ退避させたりなど、被害が及ぶ前にアクションをとることができます。
商業施設、地下施設、駐車場
地下街や地下駐車場への浸水は、施設へのダメージだけでなく、来場者の人命に関わる重大な危険があります。しかし、管理人が常駐していない施設や夜間帯は水の侵入を察知することが遅れることがあります。地下への入り口やエレベーターピット、機械室などに浸水センサを設置しておくことで、現場に人がいなくても即座に状況を把握し、止水板の稼働や土嚢の設置、来場者の避難誘導など、早期の対応を進めることができます。
保険業界
損害保険業界では、台風や豪雨による水災が発生した後、契約者の被害状況の確認や保険金支払いのための現地調査に膨大な時間と手間がかかることが課題となっています。企業や施設の浸水センサが検知した「いつ、どの高さまで浸水したか」という客観的なデータを活用することで、被害の有無を遠隔から即時に把握できるようになります。これにより、現地調査の効率化や、被災した契約者への迅速な保険金支払いなどに役立てる取り組みが始まっています。
これらの利用事例やユースケースからわかるように、浸水/冠水検知センサは、災害時の対応だけでなく、事前のリスク管理や計画、価値評価においても極めて有効なツールです。各業界での積極的な利用が、より安全な社会の構築やビジネスリスクの軽減につながり始めています。
低コストで多地点監視が始めやすい「SUIJIN」
浸水対策において、複数地点の監視は重要ですが、機器の導入に伴う電源確保や通信工事の手間、そして初期コストが大きなハードルになりやすいです。
当社が提供する浸水検知サービス「SUIJIN」は、外部電源や中継機が不要な電池駆動型のセンサと、低消費電力通信を組み合わせることが可能です。結束バンド等で簡単に設置でき、使用状況次第では約5年間のメンテナンスフリー稼働が可能なため、アンダーパスや窪地など、同時多発的な「内水氾濫」を警戒すべき場所への多地点展開を低コストで実現します。
Web画面でのリアルタイムな状況把握や、設定条件に応じたメールやパトランプでの自動通知により、危険な現場巡回の負担を減らしつつ、迅速な避難や通行止めといった「事前防災」の初動対応をサポートします。
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