経営企画部門や経理・財務部門では、予算や実績、KPIなど、経営判断に必要なさまざまな数字を扱います。しかし、「各部門から数字を集めて経営会議用の資料を作ることに時間がかかる」「予算と実績の差異は分かるものの、その原因まで分析できていない」といった状況では、集めた情報を十分に経営判断へ活かせません。

経営管理とは、経営目標の達成に向けて予算・実績・見込み・KPIなどの経営情報を継続的に把握・分析し、経営判断や事業活動の改善につなげる取り組みです。重要なのは、正確な数字を集計することだけではありません。「何が起きているのか」「なぜ起きているのか」「このまま進むとどうなるのか」を把握し、「何をするのか」という次のアクションにつなげることが経営管理の役割です。

本記事では、経営管理の意味や目的、予実管理・管理会計との違いに加えて、経営管理を「数字を集計する業務」で終わらせず、意思決定や改善に活用するための具体的な進め方とポイントを解説します。

INDEX

経営管理とは

経営管理とは、企業や組織が経営目標を達成するために、計画と実績を継続的に把握・分析し、必要な意思決定や改善を行う取り組みです。
経営管理では、売上や利益などの結果だけを見るのではなく、予算、実績、見込み、KPI、部門別・事業別の業績など、複数の情報を組み合わせて経営状態を把握します。

経営管理の目的

経営管理の目的は、経営目標と現在の状況との差を把握し、必要な意思決定や改善につなげることです。例えば、売上が予算を下回っていることが分かったとしても、それだけでは次に何をすべきか判断できません。

「どの事業で差異が発生しているのか」「どの要因が影響しているのか」「現在の傾向が続いた場合、年度末にどの程度の着地になるのか」といった情報まで確認することで、具体的な対策を検討しやすくなります。

つまり経営管理では、

目標を設定する → 実績を把握する → 差異を確認する → 原因を分析する → 将来を見通す → 改善する

という一連のサイクルを継続的に回していくことが重要です。

経営管理と経営企画の違い

経営企画は経営戦略や事業計画などを企画・立案する機能であり、経営管理は計画に対する実績や経営状況を把握し、目標達成に向けて管理・改善していく活動です。ただし、企業によって組織名称や担当範囲は異なるため、両者の業務が明確に分かれているとは限りません。

例えば経営企画部門が中期経営計画を策定するとともに、年度予算の策定や月次の予実分析、経営会議資料の作成まで担当している場合もあります。名称だけで区別するのではなく、「計画を立てる」「進捗を把握する」「原因を分析する」「改善につなげる」といった役割で整理すると理解しやすくなります。

経営管理と予実管理の違い

予実管理とは、設定した予算と実績を比較し、その差異や原因を把握する管理活動です。経営管理では、予実管理に加えて、着地見込みやKPI、部門・事業ごとの業績なども確認しながら、経営目標の達成状況を管理します。そのため予実管理は、経営管理を行ううえで重要な活動の一つと位置づけられます。

予算と実績を比較するだけで終わらせず、その差異がなぜ発生したのか、今後どのような影響があるのかまで分析することが重要です。

経営管理で確認する主な情報

経営管理では、予算・実績・差異・見込み・KPIなどを組み合わせ、「目標に対して現在どのような状況にあり、今後どうなりそうか」を把握します。

情報を整理すると、以下のようになります。

項目

目的

予算

どこを目指すのか

実績

現在どこにいるのか

差異

計画と何が違うのか

見込み

このままだとどうなるのか

KPI

目標達成に向けた活動が進んでいるか

予算は売上・費用・利益などの目標を数値化したものであり、実績と比較することで目標に対する進捗を確認できます。さらに差異を分析することで、計画とのずれがどこで発生しているのかを把握します。見込みは、現在までの実績や今後の予定などを踏まえた将来の着地予測です。実績だけでは「これまで何が起きたのか」しか分かりませんが、見込みを組み合わせることで「このまま進むとどうなるのか」という視点を加えられます。

また、売上や利益などの結果だけでは原因を判断できない場合には、KPIを確認します。例えば営業活動であれば、商談数や受注率など、売上につながるプロセスを確認することで、結果が変化した原因を分析しやすくなります。これらの情報は全社単位だけでなく、必要に応じて部門、事業、拠点、商品、顧客、プロジェクトなどの軸で分析します。

例えば全社では予算を達成していても、事業別に確認すると「A事業は予算を上回っている一方、B事業は下回っている」ということがあります。ただし、管理項目や分析軸を増やすほどよいわけではありません。どのような意思決定に使うのかを明確にし、必要な情報と粒度を設定することが重要です。

経営管理の基本的な進め方

経営管理では、目標を設定して終わるのではなく、実績の把握、差異分析、見込みの確認、改善までを一つのサイクルとして継続的に行います。

1.経営目標を明確にする

最初に、「何を実現するための経営管理なのか」を明確にします。売上や利益の拡大、収益性の改善、コストの適正化など、企業によって重視する経営目標は異なります。目的が曖昧なまま管理項目を増やすと、数字を集めること自体が業務になりかねません。まず経営目標を明確にし、そこから必要な管理指標を逆算します。

2.予算・KPIを設定する

経営目標を具体的な数値へ落とし込みます。売上や利益などの財務指標だけでなく、目標達成までのプロセスを確認するために必要なKPIも設定します。また、全社目標だけでは各事業部門が具体的な行動に落とし込みにくいため、必要に応じて事業や部門などの単位に分解します。

3.実績データを収集する

予算やKPIに対する実績を継続的に収集します。この段階で重要になるのが、データの定義と管理ルールです。例えば部門によって集計期間や科目の考え方が異なると、同じ指標のつもりでも単純に比較できない可能性があります。
どのデータを、どのタイミングで、どのルールに基づいて収集するのかを明確にしておく必要があります。

4.予算と実績の差異を分析する

予算と実績を比較し、計画との差異を確認します。重要なのは「予算比90%だった」といった結果を確認するだけで終わらせないことです。どの部門や事業で差異が発生しているのか、どの項目が影響しているのかなど、改善策を検討できる粒度まで掘り下げます。

5.着地見込みを確認する

現在までの実績だけでなく、今後の予定などを加味して着地見込みを確認します。実績と見込みを組み合わせることで、「現在どうなっているのか」だけでなく、「このまま進むとどうなるのか」を確認できます。目標未達が予想される場合にも、早い段階で対策を検討しやすくなります。

6.改善策を決定・実行する

最後に、分析結果を具体的な行動につなげます。経営管理では、レポートを作成することがゴールではありません。

「原因は何か」「どのような対策を行うのか」「誰がいつまでに行うのか」を具体化し、その後の実績やKPIの変化を確認します。

こうしたサイクルを継続することで、経営管理を実際の経営判断や事業活動の改善につなげていきます。

経営管理がうまくいかない5つの原因

経営管理がうまく機能しない背景には、システムだけでなく、データ、管理ルール、分析方法、運用など複数の要因があります。

1.経営情報が複数のExcelやシステムに分散している

経営管理に必要な情報が複数のシステムやExcelファイルに分散していると、分析を始める前にデータを収集・加工する必要があります。さらに、ファイルごとに項目名やデータ形式が異なれば、統合するための作業も発生します。

経営管理を改善するには、分析方法だけでなく、その前段階となるデータ収集の仕組みから確認することが重要です。

2.データ収集・集計に時間がかかる

各事業部門からExcelファイルを回収し、経営企画部門や経理・財務部門が転記・集計している場合、毎月同じ作業を繰り返すことになります。集計に多くの時間を使えば、その分、差異の原因分析や改善策の検討に使える時間が少なくなります。

「集計を効率化したい」という課題は、単なる業務効率化ではありません。分析や意思決定に使える時間を確保するための課題として捉えることが重要です。

3.部門ごとに管理ルールや数字の定義が異なる

部門によって集計方法や管理単位が異なると、数字を集めても横並びで比較できない場合があります。そのため、管理する指標や科目、部門などのマスタ、データの集計方法といった運用ルールを整理する必要があります。
システム化を検討する場合でも、まず「何を、どのルールで管理するのか」を明確にすることが重要です。

4.予算と実績を比較するだけになっている

予実表を作成して経営会議に報告するだけでは、数字を十分に活用できていない可能性があります。予算と実績の差異は、「何かが計画と違っている」という事実を示すものです。その差異がどこで、なぜ発生したのかを分析することで、初めて具体的な改善策を検討できます。

5.分析結果が具体的な改善につながっていない

分析を行っても、具体的な意思決定や行動につながらなければ経営改善には結びつきません。分析結果を経営層だけが確認するのではなく、必要に応じて事業部門とも共有し、「誰が何を改善するのか」まで落とし込むことが重要です。

経営管理を「集計」から「意思決定」に変える4つのポイント

経営管理を意思決定に活用するには、「何が起きたか」を把握するだけでなく、「なぜ起きたか」「このままだとどうなるか」「何をするか」までつなげる必要があります。

1.数字を集める目的を明確にする

最初に確認すべきなのは、「その数字を何の判断に使うのか」です。取得できるデータをすべて管理しようとすると、レポートやKPIが増え続け、かえって重要な情報が見えにくくなる場合があります。

「経営層が何を判断するために必要なのか」「事業責任者が何を改善するために必要なのか」という視点から、管理する情報を決めることが重要です。

2.差異の金額だけでなく原因まで分析する

予算と実績に差がある場合、「差異はいくらか」で分析を終わらせないことが重要です。例えば売上が予算を下回っているのであれば、事業別、部門別、商品別など、必要な切り口へ掘り下げます。
「何が起きたのか」から「なぜ起きたのか」へ分析を進めることで、具体的な対策を検討しやすくなります。

3.実績だけでなく見込みを管理する

実績は、過去から現在までの結果です。経営判断では過去を振り返るだけでなく、その情報を今後の判断に活用する必要があります。そのため、「何が起きたのか」から「このままだとどうなるのか」へ視点を広げることが重要です。
実績と見込みを継続的に確認することで、目標未達が予想される場合にも、早い段階から対応策を検討できます。

4.分析結果を具体的なアクションにつなげる

経営管理の最後のステップは、意思決定と改善です。
分析して終わりにするのではなく、結果を具体的な意思決定や改善につなげることが重要です。

例えば、売上が予算を下回っている場合、差異を確認するだけでなく、

何が起きたのか → なぜ起きたのか → このまま進むとどうなるのか → 何をするのか

という順番で確認します。

原因を分析したうえで、「誰が・いつまでに・何をするのか」まで具体化し、実行後は売上や利益、KPIなどの変化を確認します。こうした分析→意思決定→実行→検証のサイクルを継続することで、経営情報を実際の改善につなげることができます。

Excelによる経営管理の限界と見直す判断基準

Excelでも経営管理は可能ですが、管理対象や利用者、分析軸などが増えると、データ収集や更新、整合性確認の負荷が高まりやすくなります。
重要なのは、「Excelかシステムか」を最初に決めることではありません。現在の経営管理にどのような課題があり、どの部分を改善すべきなのかを整理したうえで、自社に適した方法を選ぶことです。

Excelでも経営管理できるケース

管理する部門や指標が限定され、データ量も多くない場合は、Excelでも対応できるケースがあります。既存の業務に合わせて柔軟に表や計算式を作成できることもExcelの特徴です。そのため、経営管理を行うからといって、必ずシステム化する必要があるわけではありません。

経営管理の方法を見直す判断基準

一方、次のような状況が継続している場合は、現在の管理方法を見直す余地があります。

    • 各部門から複数のExcelファイルを回収している
    • 転記や加工を毎月繰り返している
    • 担当者しか分からない複雑な関数やマクロがある
    • 集計作業によって分析に使える時間が少なくなっている
    • 部門・事業・商品など複数軸での分析に時間がかかる
    • 予算・実績だけでなく見込みも管理したい
    • 経営層と事業部門で同じ数字を共有しにくい

これらの課題があるからといって、すぐにシステムを導入すべきとは限りません。Excelのフォーマットや運用ルールの統一、データ収集方法の見直し、既存システムとのデータ連携など、改善方法は複数あります。
そのうえで、管理対象やデータ量、利用者、分析軸が増え、Excelなどによる運用では負荷が高い場合には、経営管理システムを活用することも選択肢の一つです。

経営管理を効率化・高度化する4つの方法

経営管理の改善では、単にツールを導入するのではなく、「管理ルール」「データ」「分析」「運用」を一体で見直すことが重要です。

1.管理する指標・ルールを統一する

まず、何をどのような単位・ルールで管理するのかを整理します。例えば部門の定義や科目、配賦方法などが統一されていなければ、データを一つの場所に集約しても適切に比較できません。
経営管理の仕組みを見直す際は、システムだけでなく、管理指標やデータの定義、運用ルールまで含めて整理します。

2.経営データを効率的に収集できる仕組みを整える

データが複数のExcelやシステムに分散している場合は、必要な経営情報を効率的に収集できる仕組みを整えます。データ収集や転記などの作業を減らすことで、経営企画部門や経理・財務部門が、分析や改善策の検討に時間を使いやすくなります。

3.必要な分析軸で数字を確認できるようにする

経営上の問題は、全社数字だけでは見つけにくい場合があります。部門、事業、商品、プロジェクトなど、自社の意思決定に必要な切り口から数字を確認できる状態を整えることが重要です。ただし、分析軸を増やすこと自体を目的にするのではなく、どのような判断に使うのかを基準に必要な粒度を決めます。

4.経営層と現場が必要な数字を共有できる環境をつくる

経営情報は、経営企画部門や経理・財務部門が報告資料を作成するためだけのものではありません。事業責任者や部門責任者が自部門の状況を確認できれば、数字を日々の改善活動に活用しやすくなります。「経営層が意思決定に使う数字」と「現場が改善に使う数字」を必要に応じて関連づけ、組織内で共通認識を持てる環境を整えることが重要です。

経営管理は「数字を集めること」ではなく「数字を意思決定に使うこと」

経営管理では、予算、実績、見込み、KPIなどの経営情報を正確に把握することが重要です。しかし、数字を集計して経営会議用の資料を作るだけでは、経営管理の目的を十分に果たせません。 

重要なのは、実績や差異を確認するだけでなく、その原因を分析し、今後の見込みを踏まえて必要な意思決定や改善につなげることです。 

そのためには、必要な経営情報を適切なタイミングで把握し、差異の原因を分析できる状態を整える必要があります。また、経営企画部門や経理・財務部門だけでなく、経営層や事業部門も、それぞれの意思決定や改善に必要な数字を確認できる環境づくりが重要です。

集計作業の負荷やデータの分散によって分析に十分な時間を使えていない場合は、Excelの運用方法、管理ルール、データ収集方法などを見直し、必要に応じて経営管理システムの活用を検討するとよいでしょう。

経営管理の効率化・高度化を検討している方へ

「毎月の予算・実績の集計に時間がかかる」「部門別・事業別の数字を必要なタイミングで確認できない」「予算と実績を比較するだけで、差異の原因分析まで手が回らない」といった課題がある場合は、経営管理の仕組みそのものを見直すタイミングかもしれません。
まずは、

    • 予算・実績の集計にどの程度の時間がかかっているか
    • 部門や事業ごとの数字を必要なタイミングで確認できるか
    • 差異の原因まで掘り下げて分析できるか
    • 実績だけでなく見込みまで管理できているか
    • 経営層や事業部門が必要な数字を確認できるか

といった点から、自社の経営管理の状況を整理してみましょう。

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