各部門から実績を集めても、提出後の修正が続き、どの数字が最新なのか分からない。集計結果と会計システムの金額が合わず、確認だけで時間が過ぎてしまう。実績管理では、こうした日々の運用が経理・経営企画部門の負担になることがあります。
実績管理を改善するには、集計作業の効率化に加えて、何を実績として扱い、いつ確定し、修正をどう反映するかを決める必要があります。数字を作る手順が整ってこそ、部門間で同じ情報を共有し、改善策を検討できます。
本記事では、実績管理の基本と予実管理との違い、仕組みづくりの進め方、当社が支援した業務改善事例を解説します。
INDEX
実績管理とは
実績管理とは、業務で発生した売上・費用・数量・工数などを収集・整理し、活動の結果を把握して改善に活用する取り組みです。
対象になるのは、会計上の金額だけではありません。受注件数、製造数量、作業時間なども、管理目的に応じて扱います。ただし、集める項目を増やすだけでは現場の負担が大きくなります。誰がどのような判断に使うかを明確にし、必要な指標を選ぶことが基本です。
予実管理・予算管理との違い
実績管理は活動結果の把握、予実管理は予算と実績の比較・分析に重点があります。例えば、部門ごとの売上と費用を集め、当月の利益を確認するのが実績管理です。その利益を予算と比較し、差異の原因や対策を検討するのが予実管理です。予算管理は、予算の策定・配分や執行状況の管理などを含み、実務上はこれらの取り組みが重なります。
いずれの場合も、比較の土台となる実績値が不正確では、適切に判断できません。予実管理を始める際も、まず実績の集計対象と計上ルールを確認する必要があります。
管理する指標と集計単位
実績管理では、指標とあわせて「どの単位で集計するか」を決めます。例えば、全社売上だけでは、どの部門や製品で変化が起きたかは分かりません。部門別・製品別の売上数量と単価を確認できれば、売上増減の内訳を捉えやすくなります。案件別の工数を把握する場合は、案件コードと作業記録を対応づける必要があります。
一方、取得できない情報まで細かく求めると、手入力や推計が増えます。判断に必要な細かさと、現場が継続して記録できる範囲を両立させることが重要です。
実績管理の見直しが必要になる背景
実績管理の見直しが必要になるのは、数字を集める負担や確認の遅れによって、改善に使える時間が不足している場合です。
例えば、集計を終えてから入力漏れが見つかり、報告資料まで作り直しているなら、表の修正だけでは問題が残ります。データが発生してから報告に至るまでを確認し、どこで待ち時間や手戻りが生じているかを整理する必要があります。
データが分散し、同じ指標の数字が一致しない
複数のシステムを使う場合は、数字の定義や対象期間の違いが不一致の原因になります。
販売管理システムと会計システムでは、売上を集計する日付や処理のタイミングが異なることがあります。同じ「当月売上」という名称でも、一方は出荷日、もう一方は会計上の計上日を基準にしていれば、結果は一致しません。
この違いを確認せずに転記を自動化すると、不一致の理由が分からないまま処理だけが進みます。取得元、基準日、返品・取消の扱いまで整理することが先決です。
Excelの修正・確認が特定の担当者に集中する
Excel管理の課題は、ファイル数そのものより、更新手順や計算ルールを共有できていないことです。
複数のファイルで同じ部門名を管理していると、組織変更のたびに個別修正が必要になります。また、担当者だけが知る加工手順やマクロがあると、不在時に集計を進められません。
Excelは、小規模な集計や柔軟な試算に活用できます。ただし、修正箇所が増え、確認作業が常態化している場合は、共通情報の一元管理やデータ連携を検討する段階です。
実績管理の仕組みを整えると実現できること
実績管理の仕組みを整えると、数値の確認・共有を円滑にし、変化の把握や原因の検討に時間を使いやすくなります。ただし、システムを導入しただけで集計が早まり、正確性が高まるわけではありません。入力期限、確認担当、修正手順をそろえ、数字がどの状態にあるかを利用者が判断できるようにすることが前提です。
速報値と確定値を区別して状況を把握できる
速報と確定を分けることで、早期の状況把握と正式な結果確認を両立できます。例えば、日次では取得済みデータによる速報を確認し、月次では費用計上や修正を反映した確定値を共有する運用が考えられます。速報には未入力や未計上の情報が含まれる可能性があるため、更新日時、対象期間、確定状況を表示します。
速報値を確定値のように扱うと、後日の数値変更が混乱につながります。数字の利用目的に応じて、判断できる範囲も共有することが大切です。
数字の変化を明細まで確認できる
集計結果と元データを対応づけると、増減の理由を調べやすくなります。例えば、部門の費用が前月より増えたとき、費目や伝票の明細まで確認できれば、一時的な支出なのか、継続的な増加なのかを検討できます。修正履歴が残っていれば、報告後に金額が変わった理由も説明できます。
ただし、実績データだけで原因を断定できるとは限りません。数量や工数の変化を手がかりに、現場の状況と照らし合わせて判断する必要があります。
実績管理を仕組み化する進め方
実績管理の仕組みづくりは、利用目的、数値の定義、収集・確認手順、試行運用の順に進めます。最初から全社・全指標を対象にすると、調整事項が増えます。例えば、一つの部門の売上・費用から始め、集計元との一致と運用負荷を確認したうえで対象を広げる進め方が考えられます。製品選定の前に、必要な業務を具体化することが重要です。
1.利用目的と改善前の状態を整理する
まず、実績を使う場面と、現在どこに時間がかかっているかを確認します。
「月次報告を早めたい」だけでなく、誰が、いつ、どの部門の、何の数字を必要としているかを整理します。あわせて、データ回収、加工、確認、差し戻しにかかる時間を記録します。改善効果を測る指標には、集計作業時間、実績確定までの日数、差し戻し件数などがあります。作業時間だけを減らして確認不足が生じないよう、正確性に関する指標も組み合わせます。
2.実績の定義とマスタの管理責任を決める
集計ルールと共通情報の管理責任を明確にし、担当者による解釈の違いを減らします。
マスタとは、部門コードや勘定科目など、複数の処理で共通利用する基本情報です。売上や費用の計上基準に加え、マスタを誰が登録・承認・更新するかを決めます。
例えば、組織改編後に過去の実績も新組織へ組み替えるのか、当時の組織のまま残すのかによって、必要な管理方式は変わります。現在の集計だけでなく、過去との比較に必要なルールも確認します。
3.収集・照合・訂正の手順を設計する
データの取り込みから訂正までを、一続きの業務として設計します。システム連携では、ファイル連携やAPI連携などから、既存環境に合う方式を選びます。API連携とは、システム同士が定められた手順でデータを受け渡す仕組みです。
取り込み後は、件数や合計金額を集計元と照合します。エラー時には、対象データ、原因、対応者を確認できるようにします。同じファイルを再投入した場合に二重計上しないことや、訂正前後の履歴を残すことも要件に含めます。
4.並行稼働で検証し、運用へ引き継ぐ
本番移行前に、新旧の集計結果と実際の操作手順を確認します。通常の月だけでなく、返品、計上漏れ、締め後の修正なども試します。結果が一致しない場合は、単純な処理ミスか、集計ルールの違いかを切り分けます。また、月末に処理が集中しても完了できるか、障害時に復旧できるかを確認します。手順書には操作だけでなく、異常の判断基準と問い合わせ先も記載し、主担当者以外でも対応できる状態を整えます。
当社が支援した実績管理・採算管理の業務改善事例
当社が支援したある医療法人では、データ連携とマスタ管理、定型作業を見直し、実績管理・採算管理の作業負担を軽減しました。この事例では、複数のExcelツールに分散していた業務を対象に、現場の操作とデータの流れを整理しました。以下では、具体的な取り組みと確認できる効果を紹介します。
導入前の課題
医事会計データの連携に多くの操作と時間を要し、日々の業務負担となっていました。加えて、実績連携用のExcelツールが多数存在し、個別の修正や保守にも手間がかかる状況にありました。採算管理が特定の担当者の知識や経験に依存していることも課題の一つです。
こうした負担や属人化を解消するには、個別ツールの置き換えに加え、データの受け渡しから更新・管理まで、業務全体を見直す必要がありました。
導入内容
当社は現行業務のヒアリングを通じて、データ連携・入力・自動化の対象を明確にし、要件を整理しました。医事会計との連携には、データベースソフトのAccessを用いて開発したツールを採用し、業務アプリを構築できるkintoneでは、マスタの一元管理と実績入力の仕組みを整備しています。
さらに、定型的な操作を自動実行するRPAとファイル共有サービスを活用し、日々の作業を簡素化しました。要件定義後も実運用に合わせた仕様調整を重ね、改修や質問への対応を継続しています。
技術的・運用的ポイント
移行と再処理の手順まで設計し、通常時以外の作業負担にも対応しました。早期にデータを移行し、新旧システムの並行稼働を実施しました。また、ファイル単位でデータを入れ替える「洗い替え機能」を設け、修正が必要な場合の再処理をしやすくしました。
一方、要件定義後も細かな仕様変更が発生しました。この経験から、画面や仕様書の確認に加えて、実際のデータと操作で検証し、調整する期間を導入計画に確保することが重要といえます。
導入効果
連携業務の工数と、各ツールを個別修正する負担を削減しました。Accessによる連携処理の見直しと、kintoneによるマスタ管理の共通化によって、日々の管理業務の簡素化につな。
また、一部の電子カルテ端末からのデータ取り込みや、改修・質問への対応の早さも評価されています。
実績管理の導入・運用で失敗しないポイント
実績管理を定着させるには、例外処理、入力負荷、権限、保守体制を導入前から具体化することが重要です。正常に集計できることだけを確認しても、締め後の訂正や担当者変更で運用が止まる可能性があります。現場へのヒアリングでは、普段の手順に加えて「数字が合わなかったとき」「期限までに提出できなかったとき」の対応も確認します。
確定後の修正で報告値が変わってしまう
確定値を上書きし続けると、過去の報告内容を再現できなくなります。例えば、翌月に過去のデータを修正した結果、経営会議で共有した数字まで変わると、当時の判断根拠を確認しにくくなります。報告時点の確定値を保存し、訂正後の値と区別する運用が必要です。締め後の修正を当月に反映するか、翌月に調整するかは、自社の会計・管理ルールに沿って決めます。システム側では、変更者、変更日時、理由を追跡できるようにします。
管理項目を増やしすぎて入力されなくなる
分析したい項目を増やす際は、入力の負担と利用頻度を確認します。例えば、細かな作業区分をすべて手入力にすると、記録が後回しになり、入力漏れやまとめ入力が発生する可能性があります。まず既存システムから取得できる情報を利用し、手入力は判断に必要な項目へ絞ります。
利用されていない項目は定期的に見直します。入力率だけを追うのではなく、入力した情報が実際に報告や改善に使われているかを確認することが大切です。
閲覧権限と保守責任が曖昧になる
実績データの利用範囲と、運用を維持する担当を明確にします。人件費や個人に関する情報を含む場合は、担当業務に必要な範囲で閲覧・更新権限を設定します。分析目的に個人情報が不要なら、連携項目から除外することも検討します。
あわせて、マスタ更新、連携エラーの監視、バックアップ、復旧の担当を決めます。経理・経営企画部門が数値のルールを管理し、DX推進・情報システム部門が連携やインフラ、セキュリティを支えるなど、役割を分担すると運用を整理しやすくなります。
まとめ
実績管理を改善するには、集計の速さだけでなく、数字の定義・確定・訂正を含めた運用を整えることが重要です。まず、誰が何の判断に使うかを明確にし、取得元や集計単位、確認手順を決めます。そのうえで、システム連携やマスタの一元管理を進め、試行運用で正確性と作業負荷を確認します。
当社の支援事例でも、連携ツールの開発に加え、入力や更新、再処理の流れを見直しました。実績管理の見直しは、現在の集計表だけでなく、その数字が作られ、修正され、利用されるまでの業務を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。





