KYOCERA 京セラコミュニケーションシステム株式会社

ERPへの移行リスクと成功に導く5ステップ

ERPへの移行リスクと成功に導く5ステップ

事業の拡大や業務環境の変化に伴い、既存の基幹システムからERPへの移行を検討する企業が増えています。しかしERP移行は大規模プロジェクトとなるため、予算オーバーやスケジュール遅延、業務停止などのリスクを伴うものです。実際に苦戦している企業も少なくありません。本記事では、ERP移行における主なリスクと成功に導くための具体的な5つのポイントを解説します。自社の移行計画にぜひお役立てください。

 

目次


ERPへの移行が必要なケース

ERPへの移行が必要となる主なケースを下表にまとめました。具体例を交えつつ解説します。

 

ケース 詳細 移行の優先度
システムの老朽化 既存システムのサポート終了やセキュリティの脆弱性
業務の非効率性 部門ごとの個別システムで情報が分散している
法改正への対応 税制や会計基準の変更に既存システムでは対応できない
データ連携が困難 手作業でのデータ入力や転記作業が多い
海外展開 多通貨や多言語への対応が必要

※「高」は早急な対応が必要、「中」は中期的な対応を検討すべきケースを示しています。

 

上記の課題で当てはまるものがある場合、ERPへの移行は企業の競争力を保つために必要でしょう。特に、システムの老朽化は深刻な問題となります。OSやミドルウェアのサポートが終了すると、セキュリティリスクが高まるだけでなく、障害時の復旧も困難です。また、法改正への対応も課題であり、電子帳簿保存法やインボイス制度などの新しい要件に既存システムが対応できない場合、業務の継続に支障をきたしかねません。さらに、部門ごとで異なるシステムを使用している企業では、データの整合性確保や全社的な業績把握が困難になり、経営判断の遅れにつながるリスクもあります。現在の業務プロセスを客観的に分析し、どの課題が最も経営に与える影響が大きいかを慎重に判断することが重要です。

ERPへの乗り換えでよくある失敗事例と原因

ERP移行は複雑で多岐にわたる作業が必要なため、事前の綿密な計画が重要です。ここでは代表的な失敗事例とその原因を紹介します。事前に失敗パターンを把握しておけば、同じ失敗を起こすリスクを減らせるでしょう。

ベンダー選定ミスで導入が停滞

業界や自社の課題に精通していないベンダーを選んでしまうと、自社が求める要件に合わないシステムが導入されてしまうリスクがあります。価格だけでベンダーを選ぶのではなく、業界に特化した経験や類似企業での導入実績があるかどうかを重視しましょう。また、導入後のサポート体制や保守対応の充実度も重要な選定基準です。ベンダーの提案書だけでなく、実際の導入事例やユーザーの声を確認することで、より適切な判断ができます。

目的が曖昧で経営層の支援を得られない

ERPへの移行目的が曖昧だと、経営層が投資対効果の評価をできず、移行計画が進まないリスクが生まれます。ERPは高額投資になるプロジェクトなだけに、「既存の基幹システムが老朽化したから」などの理由だけでは受け入れられにくく、プロジェクト成功の基準も曖昧になりがちです。KPIを設定し、経営層に対して具体的なメリットを提示する必要があります。定量的な効果測定方法も事前に決めておきましょう。

現場の意見を優先しすぎて本来の導入目的が達成できない

システムを実際に使う現場の意見は重要なものの、現場はすべての業務プロセスに精通してはいません。現場の意見を聞きすぎると、もともとの導入目的からぶれてしまい、プロジェクト関係者全体とのすり合わせがうまくいかなくなることがあります。本来の導入目的を損なわない範囲で現場の要望を受け入れ、バランスの取れた意思決定を心がけることが大切です。優先順位を明確にして、譲れない部分と調整可能な部分を区別しておきましょう。

ERP導入プロジェクトの全体管理ができず、トラブルに対応できない

プロジェクト全体の計画を組むマネージャーがいないと、スケジュール管理やプロジェクト進行にトラブルがあった場合に対処ができません。ゴール設定から逆算した詳細な計画書の作成と、それを管理するマネージャーをつけることが重要です。また、定期的な進捗報告や課題の早期発見の仕組みも、整備しておく必要があります。外部コンサルタントを活用する場合も、社内にプロジェクトの責任者を配置することで、より効果的な管理が可能です。

カスタマイズやアドオン開発により、予算オーバーとなる

ERPは全社のシステムを統合し一元管理する仕組みを構築するため、必然的に高額投資になります。そこへアドオン開発やカスタマイズが発生すると高額になり、さらに稼働が延期されるリスクもあるのです。標準機能を最大限活用し、必要なカスタマイズのみに絞り込めば費用を抑えることは可能になります。将来のバージョンアップやメンテナンス性も考慮して、過度なカスタマイズは避けましょう。また、予算には一定の余裕を持たせておくことも重要です。

 

参考コラム:ERP導入における「Fit to Standard」とは?業務標準化を推進する新たな選択肢

ERP移行を成功させる5つのポイント

失敗事例を踏まえて、ここからはERP移行を成功へ導くための具体的なポイントを5つ紹介します。多くの企業が実践している効果的な手法です。これらを実践することで、プロジェクトの成功確率を大幅に高められるでしょう。

ERP移行の目的を整理する

まずはERPへ移行する目的を整理しましょう。例えば、既存の基幹システムやERPで発生している課題を洗い出し、解決すべき問題に優先順位をつけるなどの取り組みで移行目的を整理できます。ERP移行を単なるシステムの入れ替えではなく、業務改革の機会として捉えることが重要です。経営層や現場、IT部門それぞれの立場が抱える課題を整理し、共通認識を持ちましょう。また、移行後に実現したい理想の業務フローも具体的に描き、関係者全員で共有することによって、プロジェクトの方向性を明確にできます。

クラウド型ERP(SaaS)を検討する

オンプレミス型は自社にフィットする形でシステム構築が可能ですが、クラウド型ERP(SaaS)と比べて費用が高額になりがちです。また、保守メンテナンスも自社で行わなければならないため、IT人材の育成コストも必要になります。まずはクラウド型ERP(SaaS)を検討し、どうしても自社に必要な機能を満たさない場合はオンプレミス型ERPを検討する、といった順番で進めると良いでしょう。クラウド型ERP(SaaS)なら初期投資を抑えられ、運用負荷も軽減されます。

 

参考コラム:クラウドERPとは?メリットや効果的な導入方法も紹介

グループ会社および各拠点も含めてシステムを統一する

海外や国内に複数拠点がある企業は、グループ会社全体でのシステム統合を検討しましょう。海外拠点ともリアルタイムにデータ連携が可能となり、スピーディーな意思決定ができます。また、グループ全体でのコスト削減効果や業務標準化によるシナジー効果も生まれるはずです。各拠点の法規制や商習慣の違いも考慮し、段階的な展開計画を立てることが成功の秘訣になります。本社での成功事例を他拠点に横展開すれば、リスクを最小化できるでしょう。

ERP移行による業務改善効果をチェック

ERPへの移行で業務改善できるかを事前に確認しましょう。海外拠点と本社が別々の基幹システムを使用している場合、販売管理システムと在庫管理システムが別々で、お客様の納期問い合わせへの対応が遅れるなどのケースがあります。これらがERPによってどの程度解決されるかを具体的に確認することが大切です。また、業務フローの見直しも行い、移行による効果を最大化する準備を整えます。改善効果を数値で測定できる指標も設定しておきましょう。

内部統制強化の可否をチェック

ERPの導入により、不正やセキュリティ対策、ヒューマンエラーの防止が実現できるかどうかを事前にしっかり確認しましょう。その上で、承認フローの電子化や権限管理の徹底を図ることで、不正防止やコンプライアンス強化が期待できます。また、監査証跡の自動記録機能により、内部監査や外部監査への対応も効率化できるはずです。内部統制の強化は企業価値向上に直結するため、ERPを選ぶ際には重要な評価軸として位置づけることをおすすめします。

まとめ

ERPの移行は、企業の将来を左右する重要なプロジェクトです。失敗事例を参考にしてリスクを回避し、成功に導くポイントを実践することで、投資対効果の高いERP移行を実現できるでしょう。特に、明確な目的設定とプロジェクト管理が成功の鍵になります。
数多くの企業が採用するグローバルERP『Infor』でも、これらの成功ポイントが活かされています。詳しい資料を無料でご用意していますので、ぜひダウンロードの上、検討にお役立てください。

 

  • 記載の製品ならびにサービス名および会社名などは、それぞれ各社の商標または登録商標です。
  • サービス内容は予告なく変更する場合があります。
  • 掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
  • KCCSは京セラコミュニケーションシステムの略称です。

関連サービス

  • 製造業特化型 Infor ERPクラウドソリューション導⼊サービス

    製造業特化型 Infor ERPクラウドソリューション導⼊サービス

    製造業を熟知し、ERPの導入経験が豊富なコンサルタントが現場環境や導入目的に応じた効果的・効率的な構築・運用を支援します。
    詳しく見る
  • 中規模組立製造業向けグローバルERP CloudSuite Industrial(Infor SyteLine)

    中規模組立製造業向けグローバルERP CloudSuite Industrial(Infor SyteLine)

    クラウドベースのERPシステムです。工業用製品、金属加工、電気・電子部品、検査計測装置製造などの業界で豊富な実績があります。
    詳しく見る
  • 大規模組立製造業向けグローバルERP CloudSuite Industrial Enterprise(Infor LN)

    大規模組立製造業向けグローバルERP CloudSuite Industrial Enterprise(Infor LN)

    クラウドベースのERPシステムです。産業機械、工作装置、輸送用機械、自動車部品、ハイテク、電子機器製造などの業界で豊富な実績があります。
    詳しく見る
  • プロセス製造業向けグローバルERP CloudSuite Food&Beverage / Chemicals(Infor M3)

    プロセス製造業向けグローバルERP CloudSuite Food&Beverage / Chemicals(Infor M3)

    クラウドベースのERPシステムです。粉末・流体原料を扱う食品・飲料製造業や、化学物質製造業などの業界で豊富な実績があります。
    詳しく見る