クラウドERPとは?メリットや効果的な導入方法も紹介

企業の基幹システムとして注目を集めるクラウドERP。従来のオンプレミスERPと比べて、導入コストの削減やスピーディーな運用開始が実現できるのが特長です。本記事では、その特長や選び方を解説します。
目次
クラウドERPとは
クラウドERPとは、ERP(Enterprise Resource Planning)をインターネット上で利用できるサービスのことです。クラウドERPはインターネット経由で利用できるため、サーバーの整備もいりません。多くは月額課金制で初期投資を抑えられ、場所を選ばずアクセスできるのが特徴です。運用や保守はベンダーが行うため、専門的なIT知識がなくても導入や運用ができます。
なお、ERPについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
クラウドERPとオンプレミスERPの違い
クラウドERPとオンプレミスERPの違いは、システムの設置場所と運用方法です。クラウドERPはベンダーが管理するクラウド環境でシステムが稼働し、インターネット経由でアクセスします。初期投資が少なく、導入期間も短縮できる一方、インターネット環境が必須です。オンプレミスERPは、自社内にサーバーを設置してシステムを構築します。高度なカスタマイズが可能で、セキュリティも自社で管理できますが、初期投資が高額で専門的な運用体制が必要です。現在は、コストと導入のしやすさから、多くの企業がクラウドERPを選択しています。
クラウドERPの種類
クラウドERPは提供形態により3つに分類されます。企業の規模や業務要件、セキュリティポリシーに応じて最適な形態の選択が重要です。
比較項目 |
マルチテナント型 |
シングルテナント型 |
概要 | 複数企業で同じクラウド基盤を共有 | 1社専用のクラウド基盤を利用 |
コスト | 低コスト(初期費用・運用費用が安い) | 高コスト(専用環境のため) |
カスタマイズ性 | 限定的(標準機能が中心) | 高い(自社要件に合わせやすい) |
セキュリティ | ベンダー標準のセキュリティ |
自社要件に合わせた 高度なセキュリティ |
運用負担 | ベンダーに依存(ユーザーの負担小) | 自社またはSIerが管理(負担大) |
利用目的 | ・コスト重視の中小企業 ・標準業務プロセスで十分な企業 |
・独自要件や規制対応が必要な大企業 ・機密データを扱う企業 |
クラウドERP(SaaS)を導入するメリット
ここからは、クラウドERP(SaaS)の導入により企業が得られる主なメリットを解説します。
コストを抑えて導入できる
クラウドERP(SaaS)における最大のメリットは、初期投資を大幅に削減できることです。オンプレミスERPでは、サーバー購入費、ライセンス費、システム構築費などで数千万~数億円単位の投資が必要です。一方、クラウドERP(SaaS)は月額課金制が多く、初期費用を数千万円程度に抑えられます。また、必要な機能やユーザー数に応じて柔軟にプランを変更でき、事業規模の変化にも対応可能なため、中小企業でもERPシステムの導入ハードルが下がりました。
情報の一元管理とリアルタイム更新ができる
クラウドERP(SaaS)では、インターネットを介して全ての業務データが一つのシステムに集約されるため、オンプレミスERPよりもスピーディーな情報の一元管理が実現できます。また法改正などの影響で、ERPに変更や更新があった場合にも、クラウドERP(SaaS)であればスピーディーに変更や更新が可能です。一方でオンプレミスERPでは、自社のシステム構成やインフラに左右されたり、更新の作業が必要になったりします。
海外拠点でもスムーズに導入できる
グローバル展開を行う企業にとって、クラウドERP(SaaS)は海外拠点での導入に大きなメリットがあります。オンプレミスERPでは、海外拠点にサーバーを設置し、現地でシステム構築を行う必要があり、高いコストと長期の導入期間が必要でした。
クラウドERP(SaaS)なら、インターネット環境さえあれば世界中で同じシステムを利用できます。本社と海外拠点で統一されたシステム環境を構築できるため、経営情報の一元化と標準化された業務展開が可能です。
システム障害に迅速に対応できる
クラウドERP(SaaS)では、システムの運用や保守はメーカーまたはベンダーが行うため、自社でIT専門スタッフの配置は不要です。ベンダーは専門的な知識と監視体制を整えており、システム障害が発生しても迅速な復旧対応が期待できます。
またデータのバックアップも自動的に行われ、災害時のデータ復旧も含めた事業継続計画(BCP)の一環として機能するでしょう。定期的なセキュリティアップデートやシステムメンテナンスもベンダーが実施し、常に最新で安全な環境です。
クラウドERP(SaaS)を導入する際の注意点
クラウドERP(SaaS)の導入時には注意すべき点もあります。ここからは注意ポイントを確認しましょう。
システムに合わせて業務が変わる場合がある
クラウドERP(SaaS)は標準化されたパッケージソフトウェアなので、既存の業務プロセスをシステムに合わせなければなりません。特に、独自の業務フローや承認プロセスを採用する企業では、大幅な業務改革が必要な場合もあります。
ただし多くの導入実績を持つクラウドERP(SaaS)には、業界のベストプラクティスが反映されているため、業務の標準化や効率化を促進する効果も期待できます。導入を機に非効率なプロセスを見直し、組織全体の生産性向上を図る絶好の機会でもあるのです。
情報漏えいのリスクやトラブル対応がベンダーに依存する
クラウドERP(SaaS)では、企業の重要なデータをベンダーのクラウドに保存するため、情報漏えいのリスクには注意が必要です。ベンダーのセキュリティ対策や運用体制、データ保護に関するポリシーを事前に確認します。
またシステム障害やトラブル発生時には、ベンダーに対応してもらう必要があります。自社でコントロールできる範囲が限定されるため、ベンダー選択時にはサポート体制を詳細に確認しましょう。セキュリティ要件の明確化や定期的な監査実施など、予防的な管理体制が重要です。
インターネット環境がなければ利用できない
クラウドERP(SaaS)の利用には、安定したインターネット環境が必須です。ネットワーク障害やインターネット回線の不具合が発生した場合、システムにアクセスできなくなり、業務が停止するリスクもあります。
クラウド型ERP(SaaS)を利用している場合、数時間のシステム停止でも事業に大きな影響を与えることもあります。また、インターネット回線の品質によってはシステムの応答速度が遅くなる場合もあるため、適切な回線環境の整備が求められます。
クラウドERP(SaaS)に向いている企業
ここからは、どのような企業にクラウドERP(SaaS)が適しているかを解説します。
導入コスト・期間を抑えたい企業
初期投資を抑えて迅速にERPを導入したい企業には、クラウドERP(SaaS)が最適です。特に、成長段階にあるベンチャー企業や中小企業では、限られた予算とリソースの中で効率的なシステム導入ができます。
クラウドERP(SaaS)なら、高額になりがちな初期投資を抑えられ、導入期間も短縮可能です。多くのクラウドERP(SaaS)は設定済みのテンプレートにより、迅速な運用が開始できます。また月額課金制により、事業規模の拡大に合わせて段階的に機能を追加できる点も魅力です。
システム運用・保守を行う体制が不足している企業
クラウドERP(SaaS)は、ITスタッフやシステム運用体制が不足している企業に向いています。オンプレミスERPでは、サーバーやデータベース管理、セキュリティ対策など、専門的な知識を持つスタッフが必要です。
クラウドERP(SaaS)であれば、これらの運用や保守をベンダーが代行してくれます。システムアップデートやセキュリティパッチの適用も自動化されており、常に最新の環境です。IT専門の体制が整っていなくても、高度なERPを安定的に運用できます。
リモートワークを促進している企業
リモートワークを促進している企業には、クラウドERP(SaaS)は不可欠なツールです。従来のオンプレミスERPでは、社内ネットワークからしかアクセスできず、テレワークでの業務が困難でした。
クラウドERP(SaaS)なら、インターネット環境さえあれば自宅や外出先からでもシステムにアクセスでき、オフィスと同様の業務ができます。承認業務や経費精算、売上管理なども場所を選ばずに実行できるため、業務の継続性と効率性の両立が可能です。
自社に最適なクラウドERP(SaaS)の選び方
ここからは、適切なクラウドERP(SaaS)を選ぶための重要なポイントを説明します。
自社の業界・業務とマッチするERPを選ぶ
ERPを選ぶ際には、自社の業界が持つ特性や要件に合った製品を選ぶことが重要です。製造業やサービス業、小売業など、業界特化型のERPパッケージが多数提供されており、それぞれに最適化された機能が搭載されています。
また、企業の規模に応じた機能の豊富さや拡張性も重要な選択基準です。導入前には、自社の業務プロセスを詳細に分析し、必要な機能を明確化した上で、複数のベンダーから提案を受けて比較検討しましょう。
長期利用が可能なERPを選ぶ
ERPは企業の基幹システムとして長期間利用するため、将来の事業拡大や変化に対応できる拡張性と安定性を持つ製品を選ぶことが重要です。特に、ユーザー数の増加、新規事業の追加、海外展開などの成長シナリオに対応できるかを検討します。
また、ベンダーの事業継続性や製品の開発ロードマップも重要な判断材料です。長期的なサポート体制が確保されており、定期的な機能追加やアップデートが計画されているベンダーを選択しましょう。
セキュリティ対策が万全なERPを選ぶ
企業の機密情報を扱うERPでは、強固なセキュリティ対策が欠かせません。ベンダーがISO27001等の国際的なセキュリティ基準に準拠しているかは、チェックが必要です。システムには、データ暗号化やアクセス制御、監査ログ機能などの技術的対策が適切に実装されているかを確認しましょう。さらに、ベンダーのセキュリティインシデント対応体制や、定期的なセキュリティ監査の実施状況なども把握しておきたいところです。
定期的なアップデートで法改正にも柔軟なものを選ぶ
法規制の変更へ迅速に対応できるERPの選択が重要です。消費税率の変更、電子帳簿保存法への対応、インボイス制度導入など、近年は法改正が頻繁で、システムの適応性が企業運営に直結します。
クラウドERP(SaaS)の多くは、法改正に対応したアップデートが自動的にされ、ユーザーは追加費用なしで最新の法規制に準拠したシステムが利用可能です。ただしベンダーの対応スピードや範囲には差があるため、過去の法改正対応実績を確認しましょう。
クラウドERP(SaaS)を導入する際のポイント
ここからは、クラウドERP(SaaS)の導入を成功させるための具体的なチェックポイントを解説します。
自社に必要な機能を備えているか
ERPの導入効果を最大化するには、自社の業務要件を満たす機能が適切に搭載されているかを詳細に検証します。基本機能の充実度はもちろん、業界特有の要件への対応状況も重要なポイントです。
また、既存システムとの連携機能も確認しましょう。データ連携がスムーズに行えるか、システム全体の整合性を保てるかを検討します。実際のデモンストレーションや試用版で、操作性や処理速度、レポート機能などを体験するのがおすすめです。
導入実績は豊富か
ベンダーの導入実績は、自社と同規模・同業界での導入事例が豊富にあるかを確認することで、システムの適合性とベンダーの業界理解度を評価できます。
導入実績が豊富なベンダーは、さまざまな課題への対処法やベストプラクティスを蓄積しており、スムーズな導入とその後の運用支援が可能です。参考事例を確認する際は、導入期間、導入効果、発生した課題とその解決方法などを詳細に聞き取り、自社での導入イメージを具体化しましょう。
システムが使いやすいものか
ERPの使いやすさも重要な要素です。いくら高機能でも、操作が複雑で使いにくければ、社内での定着は困難になります。直感的な操作性、分かりやすいメニュー構成、効率的な業務フローかを確認しましょう。
また、ITに詳しくない現場スタッフでも簡単に操作できる機能と、管理者向けの高度な設定機能が適切に分離されているかをチェックします。モバイルやマルチデバイス対応も重要な要素です。業務担当者は操作性を確認しておきましょう。
ベンダー側のトラブル発生時のサポートが十分か
クラウドERP(SaaS)では、システムの運用をベンダーに依存するため、サポート体制の充実度も欠かせません。サポート体制、障害時の対応時間、復旧手順の明確性などを詳細に確認する必要があります。
また、サポートの質も重要です。問い合わせへの迅速性と正確性、技術的な課題への対応能力、ユーザー教育や運用支援の充実度などをチェックしましょう。さらに、定期的なサポートサービスがあることも重要なポイントです。
まとめ
クラウドERP(SaaS)は、従来のオンプレミスERPと比較して、初期投資の削減、導入期間の短縮、運用負荷の軽減など多くのメリットがあります。一方で、インターネット環境やベンダーへの依存度の高さなど、注意すべき点もあります。
これらのリスクを適切に判断し、自社の業務要件や成長戦略に最適なシステムを選択することが成功の鍵となります。KCCSであれば、安定した運用と継続的な成長支援の実現が可能です。ぜひご検討ください。

KCCSマーケティング編集部
京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)のマーケティング編集部より、製品およびサービスに関連する有益な情報をお届けいたします。お客様にとって価値ある情報を提供することを目指します。
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