グローバル展開におけるERP導入の成功ポイント

海外展開を進める企業にとって、拠点間をつなぐERP導入は避けて通れない課題です。本記事では、ERPを活用してグローバル経営を効率化するための選び方と導入ポイントを解説します。
目次
グローバル企業におけるERPの重要性
企業がグローバル進出を図る際、ERPによる海外拠点とのシステム連携は、業務システムや業務プロセスを標準化する上で重要です。グローバル企業では、国ごとの習慣や規制に対応しつつ、一貫した経営方針を維持する必要があります。ERPを導入すれば、財務や顧客、在庫や生産状況に関するデータが一元管理されるため、各拠点の業務プロセスを標準化し、経営の透明性を高められます。さらに、リアルタイムでの情報共有により、迅速な意思決定が可能です。
グローバル企業がERPを導入するメリット・デメリット
グローバル企業がERPを導入すると、海外拠点との情報統合や業務プロセスの標準化などのメリットが得られます。一方で、多額の初期投資や各国の法規制への対応など、グローバル企業特有の課題もあるため事前の確認が必要です。以下でグローバル企業がERPを導入するメリット・デメリットをお伝えします。
メリット
グローバル企業がERPを導入するメリットは以下の通りです。
- 日本の本社と海外拠点のデータを一元管理ができ、二重入力やミスが削減される
- リアルタイムで経営状況を把握でき、迅速かつ正しい経営判断ができる
- 国を超えて全拠点で異なっていた業務手順を統一し、効率性を向上させられる
- 多言語・多国通貨対応、各国の会計や法規制対応など、
グループ全体でのガバナンス向上とコンプライアンス対応が実現する
デメリット
一方で、以下のデメリットには注意が必要です。
- 導入費用は高額になり、拠点数が多いほど負担が大きくなる
- 全拠点への展開には、国ごとの事情があるため特に長期間を要する
- 各国の商習慣や法規制など、細かいローカル要件への対応が必要になる
- 業務プロセス変更に対する現場従業員からの反発が生じる可能性がある
ERPをグローバル企業が導入する際の課題(海外編)
本社側から見たグローバルERP導入の課題は多岐にわたり、経営管理の観点から問題がたくさんあります。海外拠点を含めたグループ全体での経営状況をリアルタイムに可視化する必要がある一方で、各拠点のデータ収集には時間を要するのが現状です。さらに、異なる通貨での決算処理や海外拠点のコンプライアンス状況の把握、多額の導入コストと長期間を要するプロジェクト展開など、本社として解決すべき課題を体系的に整理することが欠かせません。以下でグローバル企業の本社がERPを導入する際に抱えがちな課題を紹介します。他社事例で見られる課題を参考に、自社の判断基準に役立てましょう。
海外拠点を含めた全体の経営状況が見えない
課題の1つ目は、海外拠点を含めた会社全体の経営状況が見えない場合です。経営層が正しい数字をもとに経営判断を行うためには、海外拠点を含めた会社全体の経営数字がスピーディーに集計される仕組みが必要です。特にグローバルビジネスでは株価の日々の変動がデータに影響を与えるため、よりタイムリーかつ正確な数字の集計が求められます。海外の各拠点ごとに個別のシステムを導入しており、スピーディーに数字を集計できない場合にERPは必要となるでしょう。
海外拠点の内部統制が困難
海外拠点も含め、グループ会社全体で健全に事業を伸ばしていくためには、内部統制もグループ全体で行う必要があります。しかし、グループ全体で内部統制を推進するのは簡単ではありません。なぜなら、海外拠点の現地では文化や法規制が異なるため、本社の運用を浸透させるための制約条件が多いからです。そのためERPを導入し、海外の各拠点の監査ログなど不正防止の仕組みを構築して内部統制を強化する必要があります。
グループ全体でのERP導入にコスト・時間がかかる
そもそもグループ全体でERPを導入することにコストと時間がかかるという課題もあります。なぜなら、海外拠点と本社のデータをタイムリーに集計したり、データ連携する仕組みを整備することに多大なコストがかかるからです。現行のシステムやカスタマイズを前提とすると、開発コストが雪だるま式に増えていくため、「Fit to Standard」の発想でERPを導入する必要があります。近年は、SaaS型ERPが発展しており、ERPの標準機能がすでに備わっているものも多くあります。自社開発するよりも、ERP導入コストを抑えられるため、ERP導入のコストや時間をできるだけ減らしたい場合におすすめです。SaaS型ERPについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
参考コラム:SaaS型ERPとは?クラウドERPとの違いを紹介
海外通貨が原因で決算業務が複雑
グローバル企業では、海外拠点で使用する現地通貨への対応機能構築が大きな課題となります。為替レートの自動取得・更新機能や、各拠点の現地通貨建て財務諸表を本社基準通貨に自動換算する処理ロジックの設計が必要です。また、換算差額の自動計算機能や連結決算時の通貨統合処理の実装も求められるでしょう。海外拠点が多ければ多いほど、前述の業務が増えていくため、決算業務に追われることになってしまいます。決算業務をより効率的にするためにも、ERPの導入が効果的です。
ERPをグローバル企業が導入する際の課題(海外拠点編)
海外拠点側では、各国の法規制や商習慣への対応、本社への情報共有の難しさ、事業拡大に合わせたシステム対応などが大きな課題となります。また、現地でERPを運用する人の確保も重要な検討材料となるでしょう。ここでは、海外拠点がERPを導入する際に抱えがちな課題を紹介します。
本社への情報共有が困難
それぞれの海外拠点が個別に管理している顧客データや販売データを、本社へ集約するのに多くの工数を要します。現状では、Excelや独自システムでデータ管理を行っているケースが多く、本社のフォーマットに合わせたデータ加工や確認作業に時間がかかっていることでしょう。本社と同じERPを導入することで、情報共有を迅速化するためのデータ一元管理機能が可能となります。
日本と商習慣や法規制が異なり対応が複雑多岐にわたる
海外拠点では、日本と異なる現地の法規制や商習慣に合わせたシステム運用への対応が複雑多岐にわたります。日本の標準的な業務プロセスでは現地の会計基準や税務要件を満たせず、独自の運用ルールが必要となる場合もあるからです。また、法改正への対応も現地で独自に検討する必要があるでしょう。これら現地の拠点ごとの課題に対応するため、通貨・言語・会計制度の違いに柔軟に対応できるERPが必要です。
事業拡大に合わせて柔軟にシステムを対応させなければならない
海外拠点では、事業拡大に合わせてシステムを柔軟に対応させなければなりません。将来的な機能追加やカスタマイズに対応できる拡張性の高いERPを選ぶことが大切ですが、どの程度の柔軟性が必要かの判断は難しいところです。事業成長に応じてユーザー数やデータ量を増やせるクラウド型ERPを選定すべきか、オンプレミス型にすべきかも検討します。現地でのシステム変更作業を担える人材確保も考慮し、運用しやすいERPを選ぶことが求められるでしょう。
ERPの運用ができる人材を現地で確保しなければならない
ERP導入時には、現地でシステム運用を担える人材の確保が課題となります。ERPの技術知識に加えて現地の業務プロセスを理解できる人材が必要ですが、複合的なスキルを持つ人材の採用は困難です。また、ERP導入プロジェクト中に現地スタッフを育成する時間的余裕も限られています。人材流動性の高い地域では、導入完了前に担当者が退職するリスクもあるため、複数名での体制構築や引き継ぎ計画も重要な課題となるでしょう。
ERPのグローバル展開を成功に導くポイント
ERP導入をグローバルで成功させるためには、適切なシステム選定から段階的な展開、従業員への丁寧な説明と教育まで、体系的なアプローチが必要です。ポイントを押さえることで、導入リスクを軽減し確実な成果を上げられるでしょう。ここでは、ERPのグローバル展開を成功に導くポイントを紹介します。
多言語・多通貨に対応するERPの選定
海外拠点と本社では商習慣やビジネスプロセスが大きく異なるため、多言語・多通貨対応は必須機能です。現地向けのカスタマイズも可能ですが、費用が高額になるリスクがあります。標準機能で多くの要件をカバーできるシステムを選択することで、導入コストを抑制できるでしょう。また、将来的な機能拡張やバージョンアップへの対応も重要な選定基準です。グローバル展開実績のあるベンダーを選べば、安心してシステム運用を行えるでしょう。
一部の海外拠点でテスト導入する
全海外拠点への一斉導入は思わぬトラブルや問題が発生するリスクが高いため、段階的に展開することが重要です。まず1つの海外拠点でテスト導入を行い、問題点を洗い出して改善策を検討していきます。テスト拠点での成功事例を他拠点に横展開することで、導入効率を向上させられるでしょう。また、各拠点の特性に合わせた調整ポイントも事前に把握できます。成功パターンの確立により、後続拠点での導入期間短縮も期待できます。
なお、一部海外拠点でテスト導入してから他拠点展開がリスクが低いのですが、サプライチェーンと密に関連している場合など、一斉導入の方がメリットが出る場合もあります。どのような展開方法が適しているかは、専門のERPコンサルタントに相談しましょう。ERPコンサルタントについては以下の記事をご覧ください。
参考コラム:ERPコンサルタントとは?役割をわかりやすく紹介
導入目的と従業員への事前説明を行う
ERP導入により業務プロセスが変更される部門では、従業員の理解と協力が不可欠です。導入目的や新しい運用ルールを事前に説明しないと、現場から反発を招く可能性もあります。導入の必要性と期待される効果を明確に伝えることで、従業員の納得感を醸成することが欠かせません。変更管理の一環として、定期的なコミュニケーションの場を設けることも効果があります。経営層からのメッセージ発信で、組織全体の協力体制を構築することも重要です。
従業員に対するERP運用の教育を行う
ERPを導入しても、実際に使用しなければ経営判断に必要なデータを取得できません。正確なデータ入力を行ってもらうためには、操作マニュアルや運用ルールの整備が必要です。体系的な研修プログラムにより、従業員のスキル向上を図ります。また、継続的なサポート体制の構築により、導入後も安定した運用を維持できるでしょう。現地語での教育資料の準備や、文化的背景を考慮した指導方法の採用も成功の要因となります。
まとめ
グローバル進出を狙う企業には、多通貨・多言語と現地商習慣への柔軟な対応ができるERPが必要です。製造業向けのERPとして、Inforは海外拠点を持つ法人様に最適なソリューションを提供しています。豊富なグローバル導入実績と標準機能の充実により、コストを抑えながら効果的なシステム構築が可能です。

KCCSマーケティング編集部
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