ERPとSCMの違いとは?それぞれのメリットをわかりやすく解説
 
        企業のデジタル化が進む中、ERPやSCMといったシステムや仕組みの導入を検討する企業が増えています。しかし「ERPとSCMの違いがよくわからない」「どちらを優先して導入すべきか迷っている」という企業も多いのではないでしょうか。ERPは企業全体の業務を統合管理するシステムであり、SCMはサプライチェーンに特化した経営管理手法です。この記事では、ERPとSCMの基本的な違いから導入メリット、統合のポイントまで解説します。
目次
SCMとERPの違いとは?
SCMとERPの違いは一体何でしょうか?どちらも企業におけるリソース(製品や情報など、利益を生み出すための資源全般)を最大限活用するための仕組みやシステムです。しかし、詳しく見ていくとそれぞれ目的や活用方法が異なります。両者の違いを正しく理解し、自社の業種・規模・課題に合ったシステムを選定しましょう。
管理範囲の違い

SCMは主に調達・生産・物流・販売までをつなぐサプライチェーン領域に特化した管理手法で、原材料の調達から生産計画、在庫管理、物流配送といった一連の流れを最適化します。特に製造業や小売業において、需要予測に基づいた効率的な生産や供給を実現するために欠かせない仕組みです。
また、SCMはサプライヤーの供給能力や品質といった外部情報も管理し、サプライチェーン全体の統合的な最適化を目的としています。
一方、ERPは企業全体の経営資源を統合管理し、全社最適を実現する基幹システムです。会計・人事・生産・販売などの業務データを横断的に統合し、人事・経理・営業・製造といった各部門をつなぐことで、部門間のデータ連携や全社的な情報共有を促進します。
ERPにも調達機能は備わっていますが、それは自社内のリソース最適化を目的とした調達であり、SCMのようにサプライヤーや物流網を含む外部環境までを統合的に管理するものではありません。
つまり、SCMはサプライチェーン全体の最適化を担い、ERPは企業内部の最適化を目的とするシステムです。両者は役割こそ異なりますが、連携させることで経営から現場まで一貫した最適化を実現できる点で、相互補完的な関係にあるといえるでしょう。
管理する責任者の違い
SCMとERPでは管理する責任者も違います。SCMの場合、主に生産部門や物流部門の責任者が中心となって推進されることが多いでしょう。サプライチェーンに直接関わる部門の現場責任者が、実務経験を活かして日々の運用管理を担当するケースが一般的です。現場の状況を熟知した担当者による迅速な判断が求められます。
一方、ERPの導入や運用は、情報システム部門が主体です。全社的に影響を与えるシステムのため、経営層の意思決定が重要になり、複数部門にまたがるプロジェクト管理と技術的な専門知識が必要となります。このように両者は、責任者の立場や関与する部門の範囲、求められるスキルセットが大きく異なるのです。
管理するシステムの違い
システム面での違いも明確にあります。SCMは、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、生産計画システムなど、サプライチェーンに特化した個別システムで構成されることが多いです。これらのシステムは、在庫の可視化や配送ルートの最適化など、物流・製造領域の課題解決に特化しており、比較的導入コストを抑えられます。
一方、ERPは会計、人事、販売、調達、製造など、企業の基幹業務すべてを統合した包括的なシステムです。単一のデータベースで情報を一元管理し、部門間の情報共有をスムーズにする統合性が強みになります。ERPはSCMの機能も含んでおり、将来的な拡張性に優れているのが特徴です。
SCMの定義と取り組むメリット
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、原材料の調達から最終消費者への製品提供までのプロセスを統合的に管理する経営管理手法です。それまではバラバラに行われてきた企画・開発・生産管理・在庫管理などの各業務を連携させ、サプライチェーン全体を最適化することをめざしています。大規模なSCMでは、サプライヤーや販売パートナーとの情報・データ連携を強化し、全体最適化を図ります。
SCMは、各工程を一つの鎖(チェーン)として捉え、全体の効率性とスピードの向上を図るものです。各部門間の情報共有により、需要予測の精度向上や在庫の適正化が実現し、無駄なコストの削減が可能となります。また、変化する顧客ニーズへ迅速に対応できる体制を構築することで、コスト削減と顧客満足度向上の両立が実現可能となる手法です。
生産性が上がる
SCMの実施により、生産性の大幅な向上が期待できます。従来の部門別管理では、各部門が独自の判断で業務を行うため、全体最適が図れません。SCMでは、サプライチェーン全体を俯瞰した計画立案が可能で、無駄な作業や重複作業を減らせます。各工程間の情報共有がスムーズになり連携ミスや手戻り作業が減り、業務効率が向上するのもメリットです。リアルタイムでの進捗管理で問題の早期発見と迅速な対応ができ、生産性が大きく上がるでしょう。
在庫管理の精度が上がる
在庫管理の精度向上は、SCM導入の大きなメリットの一つです。従来は、各部門が個別に在庫情報を管理、もしくは単体の在庫管理システムで情報管理していたため、全社的な在庫の把握が困難でした。SCMを導入すれば、原材料から完成品までの在庫情報をリアルタイムに一元管理できます。需要予測の精度も上がり、適正在庫の維持が可能です。過剰在庫による資金繰りの悪化や欠品による販売機会の損失を防ぎ、キャッシュフローの改善もできます。リアルタイムな在庫監視で、在庫効率の最適化が図れるでしょう。
生産や物流のリードタイムが短くなる
SCMの導入で、生産から配送までのリードタイムが短縮します。リードタイムとは、各プロセスで開始から完了までにかかる所要時間のことです。各工程が可視化されることで、ボトルネックの特定と改善が容易で、全体の流れがスムーズになります。需要予測の精度向上により計画的な生産スケジューリングができ、急な需要変動へも柔軟に対応可能です。物流面では配送ルートの最適化で配送時間が短縮され、顧客への納期短縮が実現します。
SCMに取り組む上での課題
SCMを実施するには、仕入れから販売までの工程を一気通貫で管理する必要があります。しかし、日本の企業は工程ごとに個別の業務システムを導入し、長年構築してきたレガシーシステムを使用しているケースが多いのが現状です。システム間の連携不足により、情報の分断が生まれ、SCMの全体最適化が困難になっています。
そこで頼りになるのがERPです。ERPは企業の財務・人事・販売・生産などに関する情報を一元管理し、SCMを推進する上での土台となります。
ERPの定義と導入メリット
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の財務・人事・販売・生産などの基幹業務を統合的に管理するシステムです。従来、部門ごとに個別管理されていた業務データを統合し、全社的な情報共有と業務の効率化を実現します。ERPは、会計管理、人事管理、販売管理、在庫管理、生産管理など、企業の基幹業務をすべて包含した統合システムとして機能するものです。単一のデータベースですべての情報を管理するため、データの整合性が保たれ、リアルタイムでの情報共有が可能になります。これにより正確な情報に基づいた迅速な意思決定や業務プロセスの標準化も実現し、企業全体の競争力強化につながるのです。ERPについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考コラム:ERPとは?個別業務システムとの違いや導入メリットを解説
企業の経営情報を一元管理できる
ERP導入の大きなメリットは、企業の経営情報を一元管理できることです。従来、各部門で個別に管理されていた売上、在庫、人事、会計などの情報が統合され、経営陣はリアルタイムで全社の状況を把握できるようになります。データの重複や不整合がなくなり、信頼性の高い情報に基づいた経営判断が可能です。また、部門間の情報共有がスムーズになり、KPIの可視化によって目標達成に向けた進捗管理も容易になるでしょう。
経営判断が素早く正確になる
ERPの導入により、経営判断のスピードと精度を大幅に高められます。従来は各部門からの報告によって情報収集していたため判断に時間がかかっていましたが、ERPではリアルタイムにデータが更新されるため、最新情報に基づいた迅速な意思決定が可能です。統合されたデータにより情報の信頼性が高まり、正確な現状把握ができます。データに基づいた客観的な経営判断により、勘や経験に頼らない迅速で的確な意思決定ができるでしょう。
業務の標準化により生産性が上がる
ERPの導入により、全社的な業務の標準化が実現し、生産性の向上が図れます。従来、部門ごとに異なっていた業務プロセスや帳票類が統一され、効率的な業務フローが構築されるからです。重複作業や無駄な手順が削減され、同じ時間でより多くの業務を処理できるようになります。また、自動化機能により定型業務の処理速度も向上し、従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、全社的な業務効率と生産性の大幅な向上を実現できるでしょう。
SCMを支えるERPの導入がおすすめ
SCMの実現には、デジタル技術の活用が重要です。サプライチェーン全体を効率化するためには、各工程の在庫・情報の流れをリアルタイムで見える化し、問題が発生した箇所を特定する仕組みが欠かせません。ERPは、SCMを実現・推進するうえでの中核的な基盤システムです。財務から製造、調達まで企業の基幹業務を網羅しており、SCMの推進に不可欠な機能を統合的に提供します。個別システムでは困難な部門横断的な情報連携が可能となるため、SCMを支える基盤として最適といえるでしょう。
ERPとSCMの統合メリット
ERPとSCMを統合することで、SCM単独では得られない大きなメリットが生まれます。ERPの持つ全社統合機能により、SCMの対象範囲である調達から販売までの情報が、営業や財務といった他部門の情報と連携されるからです。これにより、需要予測の精度向上や、財務状況を考慮した調達計画の策定が可能となります。
また、ERPの標準化された業務プロセスにより、SCMの実施もスムーズに進められるでしょう。さらに、統合されたデータベースにより、サプライチェーン全体のパフォーマンス分析が容易になり、リアルタイムでの意思決定と継続的な改善活動が促進されます。結果として投資効果の最大化と競争力強化も期待できるでしょう。
ERPとSCM統合のポイント
ERPとSCMを効果的に統合するためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、現状の業務プロセスを詳細に分析し、統合後のあるべき姿を明確に定義することが重要です。次に、段階的な導入アプローチを採用し、リスクを最小化しながら確実に成果を積み上げていくことが推奨されます。
会社全体に影響する大きな変革となるため、経営陣の積極的な取り組みと現場の協力を得ることが不可欠です。また、自社の業界特性を理解し、統合実績の豊富な信頼できるベンダー選びも成功の重要な要素となります。システム面では、既存システムとの連携方法やデータ移行計画を慎重に検討し、導入後の安定した運用体制構築が長期的な成功の鍵となるでしょう。
まとめ
SCMはサプライチェーン全体の最適化を、ERPは全社的なリソースの統合管理による全体最適を目指します。両者を統合的に活用することで最大の効果を得ることが可能です。ERPを基盤にSCM機能を統合することで、サプライチェーン全体の効率化と企業競争力の向上が期待できます。ERP導入をご検討の際は、豊富な実績を持つInforのERPソリューションをぜひご検討ください。

KCCSマーケティング編集部
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