ERPと会計ソフトの違いは?検討時の確認ポイントも紹介

従来は経理業務に会計ソフトを使うのが一般的でしたが、近年は会計機能も持つERPを導入するケースも増えています。会計ソフトとERPのどちらを選ぶべきかは、企業にとって重要な判断ポイントです。ERPと会計ソフトの違いや選定基準を解説します。
目次
ERPとは
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、会計・人事・生産・販売・購買など企業の基幹業務全体を一元管理するシステムです。会計ソフトが経理業務に特化しているのに対し、ERPは各部門のデータをリアルタイムで連携させ、企業全体の情報を統合的に把握できます。例えば製造業であれば、生産計画から出荷まで一連の業務フローを管理し、効率的な業務運営が実現可能です。
会計ソフトとは
会計ソフトとは、企業の経理や財務業務など会計に特化した個別業務システムです。
仕訳入力、総勘定元帳や財務諸表の作成、税務申告書の作成支援など、会計業務を効率化することを目的としています。手作業による帳簿記録と比べ、計算ミスの削減や作業時間の短縮が可能です。中小企業から大企業まで幅広く活用され、特に経理部門にとって業務効率化を実現する導入効果の高いシステムといえます。
ERPと会計ソフトの違い
ERPと会計ソフトの主な違いを下表でご確認ください。
|
ERP |
会計ソフト |
対象業務 |
全社的な基幹業務 (会計・人事・生産・販売・購買等) |
経理・財務業務に特化 |
データ連携 |
各部門のデータをリアルタイムで統合 | 主に経理部門内でのデータ処理 |
導入規模 | 企業や組織、全社規模 | 経理部門単位 |
初期コスト | 高額 | 低額 |
導入期間 | 長期間(2〜3年程度) | 短期間(2〜3ヶ月程度) |
カスタマイズ性 | 高い(業界特有の要件に対応) | 限定的(会計業務の範囲内) |
ERPは企業の情報基盤として機能し、会計ソフトは経理業務の効率化ツールとしての役割を担います。企業の規模や業務の複雑さ、将来の拡張性を考慮しての選択が重要です。
ERPのメリット・デメリット
ERPのメリットとデメリットは下表のとおりです。
|
メリット |
デメリット |
コスト面 |
事業拡大や新業務にも柔軟に対応でき、長期的な投資効果が高い |
導入コストが高額で、中小企業には負担が大きい |
機能・利便性 |
・部門間データを即時に連携し共有可能、重複入力やミスを削減 ・全社統一システムにより業務効率が向上 ・経営陣が迅速かつ正確に経営判断ができる |
・業務プロセスをシステムに合わせる必要がある ・構築から稼働まで長期間を要し、業務に影響が出る ・多機能ゆえ操作が複雑で習熟に時間がかかる |
情報 セキュリティ |
承認フローや役職による権限管理でガバナンスを強化できる |
オンプレミス型の場合、脆弱性対応やシステムメンテナンスを自社で運用しなければならない |
ERPは、会社内でシステムや業務が複雑多岐にわたっており、システム全体を連携させて意思決定を正確かつ迅速にしたい場合に最適です。
会計ソフトのメリット・デメリット
会計ソフトのメリットとデメリットは、下表のとおりです。
|
メリット |
デメリット |
コスト面 |
初期費用・運用費が安く、導入しやすい |
他の業務システムと連携する際、 追加費用が発生する可能性あり |
導入・運用面 |
短期間で導入・稼働が可能 |
販売管理など他の業務システムとの連携に制約がある |
機能・利便性 |
・会計・税務に特化した機能が充実。税制改正への対応もしやすい ・経理業務に特化しており操作がシンプル |
・経理以外の機能がなく、全社的な情報共有は難しい ・機能が限られているため、 発展的な活用には不向き |
経営管理への 効果 |
経理業務の属人化が解消され、経理のプロがいなくても正しい財務データが出せるようになる |
経営判断に必要な全社データ連携には不十分 |
会計ソフトは、経理系のバックオフィス業務を効率化したい場合に適しています。
会計ソフトからERPへ移行するメリット
会計ソフトからERPへ移行する主なメリットは、業務プロセスの統合化により部門間の情報共有がスムーズになり、重複作業や転記ミスが削減されることです。経営情報の一元管理により、リアルタイムでの業績把握や迅速な経営判断が可能になります。また、承認ワークフローや権限管理が徹底されるため、内部統制が強化されるでしょう。事業拡大や海外展開時にも、ERPの拡張性と柔軟性によってスムーズに対応できます。
ERPを選ぶ際の比較ポイント
会計ソフトからERPへの移行を成功させるためには、自社の業務要件に最適なシステムを選定することが重要です。移行時の課題やコストも考慮し、これからあげる比較ポイントに着目して検討しましょう。
クラウド型かオンプレミス型か
インターネットを活用したクラウド型ERPは初期費用を抑えられ、自社でのメンテナンスも不要で導入しやすいのが特徴です。一方、オンプレミス型ERPはカスタマイズ性が高く、自社の業務プロセスに合わせた細かい調整ができます。
セキュリティ要件や既存システムとの連携、将来の事業拡大に合わせたシステムの拡張性などを総合的に判断して選択しなければなりません。近年はクラウド型ERPの機能向上により、多くの企業がクラウド型を選択する傾向にあります。
もし、クラウド型ERPについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
参考コラム:クラウドERPとは?メリットや効果的な導入方法も紹介
導入コストは予算内か
ERPの導入には、ライセンス費用、カスタマイズ費用、導入支援費用、従業員の研修費用など、様々なコストが発生します。会計ソフトと比較しても各種費用が高額になるため、まずは予算上限を明確にし、初期費用だけでなく運用開始後の保守やサポート費用も含めた総コスト(TCO)が予算内に収まるかの確認が必要です。予算超過を避けるためにも、必要な機能を整理し、段階的導入や機能の絞り込みも検討して適切に判断しましょう。
自社に必要な機能を網羅しているか
あらかじめ自社の業務課題を整理し、必要な機能を明確にした上での選定が成功の鍵です。ERPは、業界や業種に応じて必要な機能が異なります。例えば製造業であれば生産管理や品質管理、小売業では在庫管理や顧客管理、サービス業ではプロジェクト管理など、業界特有の機能もあるはずです。標準機能で自社の業務要件をどの程度カバーできるか、追加のカスタマイズが必要な場合のコストや期間も含めて検討する必要があります。
簡単に操作できるか
ERPを利用する人は、経営陣から現場の従業員まで幅広く、ITスキルもさまざまです。会計ソフトと比較しても、ERPは多機能なため、直感的で分かりやすい操作画面を持つシステムを選ぶことが重要です。操作性が良ければ従業員の習得時間を短縮し、研修コストを削減してスムーズな導入が実現できます。実際のデモンストレーションや試験運用を通じて、現場担当者も交えて操作性を十分に確認しましょう。
サポート体制は十分か
ERP導入は企業の基幹システムの刷新であり、会計ソフトと比較しても導入規模が大きく非常に複雑なため、導入時から運用後まで継続的なサポートが不可欠といえます。ベンダーの技術サポート体制、対応時間、ユーザーコミュニティの充実度、研修プログラムの提供状況などを確認することが大切です。特に、システム障害時の対応体制や復旧時間の保証などの迅速なサポート提供は、業務継続の観点から重要な選定要素といえるでしょう。
多通貨・多言語にも対応しているか
海外展開をしている企業や、将来海外進出を検討している企業には、多通貨・多言語対応が必須です。グローバル企業向けのERPでは現地通貨での取引処理、為替レート管理、現地の会計基準や税制への対応、現地法人との連結決算機能なども重要な選定ポイントとなります。現地スタッフが利用しやすい言語での操作画面や帳票出力も必要です。グローバル展開を進めるには、国際的な業務要件に対応したERPが重要になるでしょう。
長期的にはERP導入がおすすめ
会計ソフトは経理部門の業務効率化に有効ですが、全社的な経営改善や成長を見据えるなら、ERPの導入を検討する方が良いでしょう。ERPは会計ソフトの機能を包含しつつ、人事・販売・購買・生産など幅広い業務を一元管理できます。そのため、単なる「経理効率化ツール」にとどまらず、企業全体の情報を統合して経営判断に活用できる点が大きな強みです。
会計ソフトは導入の手軽さやコスト面で優れていますが、長期的に見ればERPへの移行が業務効率化だけでなく、経営基盤強化の観点からもおすすめといえるでしょう。

KCCSマーケティング編集部
京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)のマーケティング編集部より、製品およびサービスに関連する有益な情報をお届けいたします。お客様にとって価値ある情報を提供することを目指します。
- 記載の製品ならびにサービス名および会社名などは、それぞれ各社の商標または登録商標です。
- サービス内容は予告なく変更する場合があります。
- 掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
- KCCSは京セラコミュニケーションシステムの略称です。
関連サービス