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ERPで内部統制を強化する方法をわかりやすく解説!

ERPで内部統制を強化する方法をわかりやすく解説!

企業の成長とともに複雑化する業務プロセスや増大するリスクに対応するため、内部統制の強化は経営の重要課題です。この記事では、ERPシステムを活用した効果的な内部統制の強化方法を解説します。

 

目次


そもそもERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning 企業資源計画)とは、企業のヒト・モノ・カネ・情報を一元管理するシステムです。企業においては、営業管理、在庫管理、販売管理、会計管理などの各業務プロセスを一元化し、リアルタイムでの情報共有を実現します。従来の部門別システムでは困難だった全社的なデータの可視化により、経営判断の迅速化と業務の全体最適を支援する重要なツールです。

なお、ERPについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

 

参考コラム:ERPとは?個別業務システムとの違いや導入メリットを解説

内部統制とは

内部統制とは、会社が正しく運営されるための「ルールとチェック体制」のことです。ミスから不正まで、様々な問題を防ぐために社内で決めた仕組みを指します。例えば、重要な作業は必ず複数人でチェックしたり、お金を扱う人と承認する人を分けたりするものです。上場企業では法律により、内部統制がきちんと機能しているかを毎年評価し、報告書での提出が義務付けられています。会社を健全に保つために必要な安全装置のようなものです。

なぜ内部統制が重要なのか

内部統制は会社の信用と財産を守るため非常に重要です。内部統制がとれていないと、従業員による横領、決算書の改ざん、法律違反などの不正が発生し、最終的に会社の信頼失墜や経営破綻といった深刻な事態を招く危険があります。

 

内部統制の目的

内部統制には、主に4つの目的があります。第一には「業務の有効性および効率性」として「ヒト・モノ・カネ・情報」4つのリソースを最大限有効に活用し、事業活動の目標達成に向けて業務を効率的に遂行することです。第二に「財務報告の信頼性」として、財務諸表や財務情報の信頼性を確保します。第三には「事業活動に関わる法令等の遵守」として、法令や規範、その他社内規程を遵守することです。コンプライアンスの遵守になります。第四は「資産の保全」として、資産の取得や使用、処分が正当な手続きで行われ、資産が適切に保全されるよう図ることです。これらの目的を達成することで、企業は持続的な成長と社会的信頼を獲得できます。

J-SOX法施行による内部統制強化の要請

2008年に施行されたJ-SOX法(金融商品取引法の内部統制報告制度)により、上場企業には内部統制の整備・運用が法的に義務づけられました。これは米国のSOX法を参考にして制定されたもので、財務報告の信頼性確保と投資家保護を主な目的としているものです。上場企業の経営者は事業年度ごとに内部統制報告書を作成し、監査法人による監査を受ける必要があります。内部統制報告書を提出しなかったり虚偽記載などの違反があったりした法人には、5億円以下の罰金が科される可能性があるのです。企業においては、原価計算や資産評価など複雑な会計処理が多いため、ERPによる統制の自動化が重要性を増しています。

なぜERPで内部統制が強化できるのか

ERPは業務プロセスの標準化と自動化により、人為的ミスや不正のリスクを減らします。統一されたデータベースにより、部門間のデータの不整合を防ぎ、リアルタイムでの監視が可能となるため内部統制が強化できるのです。また承認フローの電子化により、権限外の処理を防ぎ、すべての取引履歴を記録・追跡ができます。複雑な原価計算や在庫管理も、ERPによって透明性が確保され、内部統制がさらに強化できるでしょう。

内部統制を強化するために必要なこと

内部統制の強化には「内部統制の基本的枠組み」に沿った、6つの基本的要素への対応が不可欠です。統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応を体系的に整備し運用しなければなりません。

統制環境

内部統制において統制環境は基盤となる要素です。企業における誠実性や倫理観、経営者の意向や姿勢、組織文化などを指します。

ERPの導入では、経営層が率先してシステム活用を推進し、全社的なルール遵守の文化を醸成することが大切です。データの正確性や業務プロセスの遵守を組織文化として定着させ、定期的な教育研修や違反事例の共有により従業員の意識向上を図ることが、統制環境の構築において重要かつ不可欠な取り組みとなります。

リスクの評価と対応

リスクの評価と対応は、企業目標の達成を阻害する要因を識別・分析して評価し、適切な対応策を講じることです。ERPを活用することで、販売、製造、在庫などの各プロセスにおけるリスクをデータベースで一元管理できます。例えば、異常な在庫変動や原価の急激な変化を自動検知し、アラートを発信する仕組みが構築可能です。一般的なリスクである品質問題や納期の遅延、システム障害などを事前に予測し、予防的な対応を可能にします。


統制活動

統制活動とは、経営者の命令や指示が適切に実行されるのを確保する方針と手続きのことです。ERPでは職務の分離や承認手続き、記録の照合などを自動化できます。例えば、発注承認の権限設定により、一定金額以上の取引には上位者の承認を必須とする仕組みが構築可能です。業務指示や品質管理、出荷承認などの各段階でチェックポイントを設け、不適切な処理を防止します。これらの統制活動はシステムに組み込まれるため、確実な実行が可能です。

情報と伝達

情報と伝達は、必要な情報が識別、把握、処理され、組織内外の関係者に正しく伝えられることを確保する重要な要素です。ERPであれば統合されたデータベースにより、各部門が同じ情報をリアルタイムで共有できます。生産実績や品質データ、在庫状況などの重要な業務情報が即座に経営層に伝達され、迅速な意思決定が可能です。またダッシュボード機能によりKPIも可視化され、外部への財務報告も正確かつ迅速に実行できます。

モニタリング

モニタリングは、内部統制が有効に機能しているかを継続評価するプロセスです。日常的モニタリングと独立的評価があり、ERPはこれらを効率的に支援します。ERPのログ機能により操作履歴を記録し、異常な取引や権限外アクセスの自動検知が可能です。企業では生産効率や在庫回転率などを監視し、改善点を特定できます。内部監査部門はERPデータを活用して独立的評価を実施し、問題を経営層へ適切に報告する仕組みが構築可能です。

ITへの対応

ITへの対応は、組織目標を達成するためにITを有効かつ効率的に利用し、適切な方針と手続きを定めることです。社会全体で電子決済やペーパーレス化などが進み、企業活動においてITシステムは必要不可欠なものになっています。それに伴い、内部統制を適切に遂行するうえでもITシステムは必要と考えられており、内部統制の他の基本的な要素と深く結びついて一体となって評価されます。

ERP導入により、IT全般統制と業務処理統制の両面が強化可能です。生産管理システムやIoT機器との連携も含め、データの入力処理における整合性のコントロールや、セキュリティ対策やバックアップ、データへのアクセス権限の管理ができます。

ERPで内部統制を強化する仕組みとメリット

ERPによる内部統制の強化は、単なるコンプライアンス対応を超えて、企業価値向上につながる多くのメリットをもたらすものです。業務の標準化や自動化により人為的ミスを削減し、監視機能も強化されます。

データ統合による財務の透明性向上

ERPのデータ統合により、財務情報の透明性が向上します。売上や仕入、在庫、各種コストなどのデータが自動的に会計システムへ連携され、リアルタイムで財務状況が確認可能です。複雑な在庫管理やコスト計算においても、ERPによって正確な処理が可能になります。月次決算の早期化も実現し、経営判断の迅速化につながるはずです。また監査対応においても、データの一貫性が保証されるため、監査工数の削減と信頼性向上を同時に達成できます。

業務標準化による不正・エラー防止

ERPは業務プロセスを標準化し、誰でも同じように処理できる仕組みにすることで不正やエラーを防止します。承認フローがシステムに組み込まれ、権限を越えた処理は物理的にできません。受注から出荷まで一連の業務フローが標準化され、規定外の処理には必ず承認が必要になります。在庫の不正な持ち出しや架空取引の防止にも効果を発揮し、ヒューマンエラーも大幅に削減されることで、品質向上とコスト削減を同時に実現できるでしょう。

透明性による企業ブランドの信頼向上

内部統制の強化により、企業の透明性が向上し、ステークホルダーからの信頼を獲得できます。投資家は内部統制が整備された企業を高く評価し、資金調達コストの低減につながるでしょう。取引先からも、コンプライアンス体制が整備された信頼できるパートナーとして認識されます。顧客からの信頼度も向上し、ブランド価値の向上に効果的です。ガバナンス強化は企業価値を上げる重要な要素で、ERPによる内部統制強化は他社との差別化につながる経営戦略となります。

内部統制を強化するためERPの選び方

内部統制の強化を目的としたERP選定では、単なる機能の充実だけでなく、チェック体制やセキュリティ機能がどの程度備わっているかが重要な判断基準です。適切なERPを選ぶことで、企業のリスク管理能力を向上させられます。

財務会計機能が充実しているものを選ぶ

内部統制の中核となる財務報告の信頼性確保には、財務会計機能が充実したERPが必須です。複数の会計基準への対応、連結決算機能、部門別損益管理などが標準装備されているシステムを選択しましょう。正確な原価計算機能や固定資産管理、税務申告支援機能なども重要な要素となります。これらの機能が統合されたERPシステムにより、財務報告の正確性と業務効率性を同時に向上させ、スムーズな監査対応も実現できるでしょう。

可能な限りパッケージ製品のものを選ぶ

導入実績が豊富なERPパッケージ製品を選びましょう。なぜなら、様々な業種・業態のベストプラクティスが組み込まれ洗練されたシステムであり、内部統制に必要な機能が網羅されているため機能不足の心配がありません。

カスタマイズを最小限にすることでシステムの安定性が保たれ、法改正への対応もベンダーが責任を持って実施します。また、パッケージ製品は監査法人も熟知しているため監査対応がスムーズに進み、導入期間の短縮とコスト削減も期待できるでしょう。

アクセスログが管理できるものを選ぶ

内部統制が正しく機能しているかを確認するには、誰が、いつ、何を行ったかを追跡できるアクセスログ管理機能が不可欠です。ユーザーのログイン履歴、データの参照・更新・削除の記録、承認履歴などを長期間保存し、必要に応じて検索や分析できる機能が求められます。

また、データ変更の履歴も重要な監査記録です。不正アクセスの検知機能や異常な操作パターンのアラート機能も備えているERPを選択すれば、予防と発見の両面から統制を強化できるでしょう。

内部統制強化においてERPを運用する際のポイント

ERPを導入しただけでは内部統制は強化されません。適切な運用ルールの設定と継続的な改善体制が成功の鍵となります。従業員の教育や権限管理、定期的な監査も重要で、組織全体での取り組みが欠かせません。

メンバーの役職に応じたアクセス権限を設定する

職務分離の原則に基づき、各ユーザーの役職や職務に応じた適切なアクセス権限を設定することが重要です。営業担当者には顧客情報の参照のみを許可するなど、適切な権限設定が効果的です。定期的な権限の棚卸しも重要で、人事異動や組織変更に応じて速やかに権限を更新する体制の整備は欠かせません。

本番環境と開発環境を分けて不用意に更新しないようにする

システムの安定稼働と内部統制を維持するため、本番環境と開発環境を明確に分離することが不可欠です。プログラムの変更や設定変更は、必ず開発環境でテストを実施し、承認プロセスを経て本番環境に反映する手順を確立します。重要なマスタデータの変更には慎重な対応が必要で、変更による影響範囲を事前に評価する仕組みが重要です。また緊急時の変更手順も明文化し、事後承認を含めた統制を整備することで、システムの信頼性を維持できます。

ERPにアクセスする端末のセキュリティ強化

ERPへのアクセス端末(PCなど)のセキュリティ対策は、内部統制の重要な要素です。ウイルス対策ソフトの導入、OSやアプリケーションの定期的なアップデート、USBポートの無効化など基本的な対策に加え、多要素認証の導入も検討しましょう。共用端末を利用する場合は、自動ログアウト機能の設定や操作ログの取得が重要です。またリモートワークの普及に伴い、VPN接続やすべてのアクセスを常に検証するセキュリティ対策など、より高度なセキュリティ対策も必要となっています。

まとめ

ERPを活用した内部統制の強化は、コンプライアンス対応だけでなく、業務効率化と企業価値向上を同時に実現する戦略的な取り組みになります。各業界の複雑な業務プロセスに対応できる、業界特化型のERPソリューションが有効です。KCCSが提供する「Infor」は、特に大規模な製造業向けのERPとして多くの企業から支持されています。内部統制強化を検討されている際は、詳細資料をダウンロードし、課題の解決にお役立てください。

 

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  • KCCSは京セラコミュニケーションシステムの略称です。

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