公共図書館のレファレンスサービスとは? 利用者に知ってもらうべき重要ポイント

目次
公共図書館のレファレンスサービスとは?
公共図書館は書籍などの資料の閲覧・貸出・返却といった基本的なサービスのほかにも文化イベントを開催といったさまざまなサービスも提供しています。これらのサービスのなかでも、特に図書館の専門性が発揮されるのが「レファレンスサービス」です。
レファレンスサービスとは、図書館利用者の「調べもの、探しもの、お手伝いをする」というサービスです。調べたい内容にマッチした図書館の使い方や候補となる資料の提示、その置き場所の案内、資料の取り寄せなどと幅広く対応しています。
レファレンスサービスの意義
利用者が「調べたい」、「探したい」資料はさまざまで、欲しい資料へたどり着くには、専門的な知識やスキルを必要とする場合があります。
レファレンスサービスは、利用者の「調べものがしたいけど適切な資料が分からない」「探したいけどどこに資料があるか分からない」といった課題を解決できる大切なサービスです。
例えば、小学生が「夏休みの宿題で昆虫のことを調べてまとめたいけれど、参考になる本は無いか」というリクエストがあった場合には、子供向けの読みやすい昆虫図鑑などを紹介します。一方で、研究者が「東南アジアの蝶の生態を調べたい」と考えているときは、東南アジアの蝶についての専門書を紹介することができます。このように、レファレンスサービスはさまざまなニーズに応じて、最適な資料を提供し、利用者の課題解決をお手伝いします。
また、書籍のタイトルや著作名があいまいで探せないときでも、レファレンスサービスでは利用者と共に探してくれる機能も持ち合わせています。
このように、レファレンスサービスはさまざまな利用者のさまざまな質問の背景を的確に理解した上で、適切な資料を紹介します。利用者の資料探しにかかる時間を短縮し、より正確で信頼性の高い資料にたどり着くための手助けをしています。また、資料の調べ方や探し方をサポートするための専門家(レファレンス司書)が図書館のレファレンスサービスを支えています。
さらに、レファレンスサービスは利用者に対して、資料の情報への公平なアクセスを確保する役割も担っています。
インターネットの普及により図書館に来館しなくても簡単に資料を探すこともできるようになりました。しかし、年齢や障害などに起因したデジタルデバイド(情報格差)からインターネットを十分に利用できない方々もおられます。図書館のレファレンスサービスは、すべての利用者に対して公平に提供されることを目指しています。利用者の情報格差を減らし、社会全体の知識の均等な配分に貢献しています。
レファレンスサービスの課題
文部科学省が公開している「これからの図書館サービスの在り方」では、レファレンスサービスが抱えるさまざまな問題点が指摘されています。具体的には以下のような内容が挙げられています。
- サービスの存在が利用者に知られていない
- サービスの利用者が少ない
- サービスに対応する図書館の人手が不足している
- 認知度が低く利用者も少ないため、サービスの質が下がり、さらに利用者が減る悪循環
これらの課題を解決し、レファレンスサービスの認知度を上げるためには、利用者にとっての利便性が高く、質の高いサービスを提供することが重要です。
図書館が質の高いレファレンスサービスを提供するためには、十分な準備が必要です。
特に、利用者の多様な質問に的確に答えるためには、関連するキーワードや情報をもつ資料を整備する必要があります。しかし、現状としてこれらの資料は整備されているものの、レファレンスサービスにおける活用が十分にされていないケースが多く見受けられます。
さらに、インターネットの普及により情報量は急増しており、利用者が求める情報を的確に提供することはますます難しくなっています。図書館単体で膨大な情報量に対応するのは困難であるため、図書館同士や他の情報機関との連携が重要となってきます。
関連コラム:図書館資料の相互貸借とは? 図書館をもっと便利に
レファレンスサービスの充実には、利用者のニーズをしっかりと把握し、適切な情報を迅速に提供できる体制を整えることが求められています。これにより、利用者がより積極的にサービスを利用し、図書館の価値を再認識することにつながります。
国立国会図書館との連携
公立図書館と国立国会図書館は、レファレンス協同データベース(通称:レファ協)を共同で構築しています。このデータベースでは、全国の公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館等に寄せられた質問と回答を共有しています。これによって、図書館単体ではなく、地域を超えた広範囲での情報共有が可能になり、利用者の多様なニーズに応えることができます。
しかし、当社には「レファレンスサービスのデータを蓄積できても、うまく活用できていない」という声も寄せられています。レファ協ではレファレンスサービスの記録が可能ですが、その情報を次のサービスに活かすことは容易ではありません。このような課題を解決するためには、図書館システムのデジタル化が鍵となります。
デジタル化を進めることで、図書館独自で蓄積したレファレンスサービスの記録を、今後のサービスに活かせるような仕組みを構築することが重要です。これにより、利用者に対するサービスの質を向上させ、より迅速で的確な情報提供が可能となります。図書館が持つ記録の宝庫をフルに活用し、地域社会に貢献するために、今後のレファレンスサービスの発展が期待されます。
関連コラム:図書館システムとは?業務効率化とサービス向上を両立する仕組み
デジタル化に伴う公共図書館のレファレンスサービスの進化
公共図書館のレファレンスサービスは、デジタル化やオンライン化の進展に伴って進化しています。従来は対面、メール、電話などで質問を受け付けていましたが、オンラインのレファレンスサービスも進化してきています。AIチャットボットを導入して24時間どこからでも質問ができるようになり、図書館の開館時間や場所、図書館員の不足などの課題を気にせずに情報を提供することができるようになりました。SNSと連携したレファレンスサービスもあり、より手軽に図書館サービスを活用できる環境が整備されていくでしょう。
また、近年注目されている生成AIの技術を活用した蔵書検索支援への取り組みも進んでいます。
従来までは資料のタイトルや著者、出版社などのキーワードを基に検索をするため、利用者のうろ覚えや記憶違いでキーワードが正しくない場合は探している資料にたどり着けないことがありました。例えば生成AIを利用すれば、
「自由研究でリサイクルについて調べたい」という質問に対して
リサイクルおよびそれに関連するキーワードとしてSDGsやゴミ、エコなどのキーワードに関連する資料を提示することが可能になります。
参考記事:埼玉県久喜市立図書館、生成AI蔵書検索システムの実証実験を開始
このような最新技術を利用した図書館のレファレンスサービスは、利用者にさまざまな選択肢を提示し、利用者に興味を持って資料に触れていただけるように日々刻々と進化しています。
まとめ
公共図書館が提供するレファレンスサービスは、利用者の質問に対して適切な情報を提供し、リサーチ支援も行っています。今日のデジタル技術の進化により、図書館はオンラインサービスの強化やデジタル資料の増加といった変化に対応していますが、同時にレファレンスサービスの在り方が問われています。インターネットによる情報取得が普及する中、レファレンスサービスの重要性をもっと利用者に認知してもらう必要があると考えます。

KCCSマーケティング編集部
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