KYOCERA 京セラコミュニケーションシステム株式会社

ERP導入を成功に導くRFP作成ガイド|書き方・テンプレート・失敗事例も紹介

ERP導入を成功に導くRFP作成ガイド|書き方・テンプレート・失敗事例も紹介

ERPシステムの導入を成功に導くための第一歩は、適切なRFP(提案依頼書)の作成です。RFPが不十分だと、ベンダー選定のミスマッチや導入後の追加コスト発生、想定した効果が得られないリスクが高まります。本記事では、ERP導入でRFPを適切に作成するための基礎知識から作成手順、失敗しないためのポイントまで具体的に解説します。システム導入計画の精度を高め、効果を最大化するための理解にお役立てください。

 

目次


RFPとは?

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)とは、企業がシステム導入やサービス提供を依頼する際に必要な要件をまとめ、ベンダー各社に最適な提案を求めるために作成する文書です。以下で、RFPについて詳しく解説します。

ERP導入におけるRFPの重要性

ERP導入でRFPを作成する目的は以下の通りです。

・企業が求める要件や導入目的を整理し、ベンダーに正確に伝える
・複数ベンダーの提案を比較しやすくする
・追加コストや手戻りを防ぐ
・社内での認識共有と意思決定をスムーズにする

RFPは単なる書類ではなく、ERP導入を成功に導くための指針となる重要なコミュニケーションツールといえます。

RFPとRFI・RFQの違い

RFPと混同されがちなものに「RFI(Request for Information:情報提供依頼書)」と「RFQ(Request for Quotation:見積依頼書)」があります。3つの違いと使い分けは下表のとおりです。

 

文書

目的 内容の詳細
RFI 情報収集 ベンダーの技術・サービスの概要や、要望への対応可否を確認する
RFQ 見積依頼 価格や条件の提示を依頼する
RFP 提案依頼 要件に沿った具体的な提案や構想の依頼

 

特にERP導入では、業務要件やシステム連携など複雑な条件が絡むため、RFPを活用してベンダーに具体的な提案を依頼することが不可欠です。

ERP導入を成功させるRFPの作り方5ステップ

ERP導入で効果を最大化するためには、以下の手順でRFPを作成すると効果的です。システム導入の目的から選定プロセスまで、5つのステップに分けて具体的に解説します。

Step1:ERP導入の目的・ビジョンを明確化する

まずは、ERP導入の目的や導入後に実現したい業務改革の方向性を明確にしましょう。例えば、「業務効率化」、「情報の一元管理」、「経営判断の迅速化」など、具体的な成果を定義し、RFP作成時に優先すべき要件を明確にします。ERP導入の目的が不明確なままだと、ベンダー提案が散漫になり、導入効果も限定的になってしまうリスクがあります。ERP導入を検討する際は、最初に導入目的やビジョンを明確化し整理することが非常に重要です。

Step2:現状業務の課題と要件の棚卸し・可視化

次に、現状の業務フローやシステムの問題点を洗い出し、RFPに反映できるよう可視化しましょう。業務担当者へのヒアリングやデータ分析を通じて「どの業務をどう改善したいか」を具体的に整理します。具体的に整理することで、ベンダーは改善策を的確に提案できます。事前に自社が抱える問題を整理し、課題の伝達漏れを防ぐことで、導入後に追加対応が必要になるリスクも減らせるでしょう。ベンダーとのコミュニケーションやスムーズな導入のために、課題と要件の可視化が欠かせません。

Step3:必須要件・希望要件の整理と優先順位の決定

RFPでは、「必須の機能」と「あれば望ましい機能」を区別し、優先順位を明確にしましょう。例えば、「業務内で頻繁に起こる人的ミスのカバー」は優先度の高い事項ですが、「試験的に導入したいシステム」は優先度が低いと考えられます。事前に優先度をつけることで、不要なコストや過剰なカスタマイズを防げます。

Step4:ベンダーに伝わる具体的な記載項目の策定

続いて、ベンダーが理解しやすいよう、要件や業務フローを具体的にRFPへ記載します。

・操作イメージや業務フロー
・既存システムとの連携条件
・想定データ量や利用ユーザー数
・要件の優先度や実現時期

RFPに詳細な要件を記載することで、提案の精度が向上し、ベンダーとの齟齬や手戻りを防げます。特に「業務フロー図」や「利用シナリオ」を明記しておくと、ERPの適合性を客観的に比較できます。さらに、各要件の優先度や実現時期も明示しておくことで、ベンダーは提案内容の取捨選択が容易になり、プロジェクト全体の進行管理がスムーズになるでしょう。

Step5:評価基準と選定プロセスの提示

最後に、ベンダーから提出された提案をどの基準で評価するか、また選定プロセスをRFPに明示します。機能適合性、コスト、導入スケジュール、サポート体制など具体的な評価項目を示すことで、社内での意思決定がスムーズになります。各基準が曖昧だと比較検討が困難になり、導入後の不満につながるリスクがあります。RFPを作成する際は、要件の整理に加え、自社内での評価基準や選考フローを事前に明確にしておくことが重要です。

RFPに記載すべき主要な項目

RFPには、一定の構成パターンがあります。ERP導入を円滑に進めるための重要な情報を漏れなく記載する必要があります。ERP導入のRFPに盛り込むべき主な項目は以下の通りです。

・プロジェクト背景・導入目的
・業務・機能要件リスト
・システム環境・連携要件
・スケジュール・予算・契約条件
・情報セキュリティ・NDA条件

これらを丁寧に記載することで、ベンダーは自社の状況を正確に理解でき、精度の高い提案につながります。

プロジェクト背景・導入目的

RFPには、まずプロジェクトの背景やERP導入の目的を明確に記載しましょう。現在の業務課題や改善したいポイントなど、導入を検討する理由を可能な限り具体的に示すことで、ベンダーは社内の状況を正確に理解できます。目的や背景を正しく共有することで、提案内容の精度が高まり、期待する導入効果を得やすくなります。

業務・機能要件リスト

ERP導入におけるRFPには、必要な業務領域と機能を一覧化して整理することが欠かせません。販売管理、在庫管理、会計管理、人事・労務管理など業務プロセスごとに分類して記載します。

さらに「必須要件」「優先度中」「将来的に検討」といった優先度を付けると、ベンダーは対応範囲を正確に把握できます。
これにより、導入後に「必要な機能が不足していた」「不要な機能にコストをかけてしまった」といったリスクを防ぐことができます。

システム環境・連携要件

既存システムや外部サービスとの連携条件、使用しているハードウェアやネットワーク環境などについてもRFPに明確に記載しましょう。現状を正確に伝えることで、提案されたERPが適合するかどうかを事前に確認できます。情報不足による想定外の追加作業を防ぐためにも、RFPには必ず現行の環境について詳しく記載しましょう。

スケジュール・予算・契約条件

導入計画や予算範囲、契約条件も、RFPの中で具体的に示してください。提案段階の時点でスケジュール感や費用感をベンダーと共有しておくことで、現実的な提案を受けやすくなります。また、あらかじめ条件を明示することで導入後の調整コストを削減し、ERP導入プロジェクトの成功率を大幅に向上させられるでしょう。

情報セキュリティ・NDA関連

RFPには、情報セキュリティに関する要件や機密保持契約(NDA)の条件についても、必ず記載しましょう。業務データや個人情報の取り扱いについて正しく伝えることで、ベンダーは適切なセキュリティ対策を盛り込んだ提案を行えます。特にERPは企業データを一元管理する基幹システムであるため、安全な運用体制を確保することが導入成功の前提条件となります。

ERP導入におけるRFP作成で陥りやすい失敗と対策

RFPはERP導入プロジェクトの成否を左右する重要なドキュメントです。
しかし、要件が曖昧だったり、過剰なカスタマイズを求めたりすると、ERP導入の失敗につながるケースも少なくありません。ここでは、ありがちな失敗例とその対策を解説します。

要件が曖昧でベンダーに伝わらない

RFPに記載した要件が曖昧で抽象的な場合、ベンダーは提案内容を正確に把握できません。例えば、「在庫管理を改善したい」とだけ記載すると、必要な帳票やアラート機能の有無などが提案に反映されず、導入後に追加開発が必要になるケースがあります。対策として、業務フローや必要機能を詳細に整理して、できるだけ具体的にRFPに盛り込むことが重要です。

過度な要求・丸投げ依頼で導入が失敗する

ベンダーにすべて任せる丸投げ依頼や、必要以上に複雑な機能要求は導入失敗の原因となります。例えば、全社レベルのカスタマイズや複雑な承認フローを一度に求めると、導入コストの増大やスケジュール遅延につながるでしょう。結果、ERP導入プロジェクトが失敗に終わる可能性があります。そのため、必須要件と希望要件を区別し、優先順位をつけて現実的な範囲で依頼することが重要です。

ノウハウ不足で作成が停滞する

社内や担当者にRFP作成の経験や知識が不足していると、作業が停滞し導入スケジュールが大幅に遅れることがあります。例えば、要件の整理や評価基準の作り方が分からず、何度もベンダーに問い合わせる事態が発生すると、計画通りにRFPが完成しません。ノウハウ不足の対策としては、過去の事例や外部の専門家の知見やリソースを活用し、段階的にRFPを完成させる方法が効果的です。

RFPを活用してスムーズなERP導入を実現

精度の高いRFPを作成すると、ベンダーは要件を正確に理解し、適切な提案が可能になります。また、必須要件を整理したRFPをもとにすれば、システム導入後に行う追加調整や余分なカスタマイズを最小限に抑えられます。KCCSが提供するInfor ERPなら、業務要件を整理しやすい構造を持っているため、RFPで明確化した要件をもとにしたスムーズな導入が可能です。初めてのERP導入であっても、導入効果を最大化し、社内の運用負荷を軽減できるでしょう。

 

 

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