ERPの選び方|企業規模に応じた最適な選定基準とは

ERPのリプレイスは一般的に10〜15年に一度行われる場合が多く、会社の中ではERPの選び方や導入に関する知識・経験が不足しがちです。
しかし、ERPが一度導入されると決まったならば、巨額の費用が発生するため失敗は許されません。ERPの導入を失敗しないようにするためには、はじめにERPの正しい選び方を知っておく必要があります。
本記事では、企業規模に応じたERPの正しい選び方を紹介いたします。ぜひご一読ください。
目次
ERPを選ぶ前にやるべきこと
ERPシステムを選ぶ前に確認しておくべき項目は以下のとおりです。
導入目的 |
・自社の経営方針の確認 ・経営方針の実現から逆算してERPの導入目的を明確にする ・ERPを導入することで解決する課題を洗い出す |
管理スコープ |
・リプレイス候補のERPで一元管理する業務の範囲を設計する 例:財務会計/管理会計/人事給与/販売管理/生産管理など ・それぞれのシステムに対応している業務フローも並行して洗い出す |
導入目的からはじめて、管理スコープ、費用と上から順番に検討していくことで、ERPを導入する際にさまざまな関係者との衝突を避けつつ、スムーズに計画を遂行できます。
自社に最適なERPの選び方
自社に最適なERPを選ぶのは一筋縄ではいきません。なぜなら、ERPの選定に必要な条件がたくさんあるからです。ここでは、自社に最適なERPを選ぶために、優先的に抑えておくべき項目を紹介します。
導入形態が自社にあっているか
ERPの導入形態には、クラウド型ERP(SaaS)とオンプレミス型ERPの2種類があります。さまざまな点で違いがありますが、下記の点で大きな違いがあります。
比較項目 |
クラウド型ERP(SaaS) |
オンプレミス型ERP |
導入形態 |
ベンダーのクラウド環境を利用 |
自社サーバーにインストール・構築 |
費用感 |
低コスト |
高コスト |
運用・保守 |
ベンダーで対応 |
自社で対応(もしくは外部委託) |
カスタマイズ |
制限あり (標準機能中心) |
自由度が高い (自社業務に合わせて調整可能) |
アップデート |
自動・定期的に実施(常に最新) |
手動で対応(コスト・工数が発生) |
利用開始までの期間 |
短い |
長い |
セキュリティ管理 |
ベンダーが主に管理 |
自社で厳密な管理が必要 |
スケーラビリティ |
高い (利用状況に応じて柔軟に対応可能) |
限定的 (システムの拡張は都度調整が必要) |
災害対策・ バックアップ |
ベンダーが対応 |
自社で準備・運用する必要あり |
向いている企業 |
スピード重視・IT人材が少ない企業 |
高いカスタマイズ性が必要な企業 |
オンプレミス型ERPの場合はカスタマイズ性が高く、高価格ではありますがユーザーが求める要件に応じて柔軟にERPシステムを構築可能です。
一方、クラウド型ERP(SaaS)はカスタマイズに制限はあるものの、低価格かつスピーディーに導入できます。また、複雑になったシステムを標準化したい場合にもクラウド型ERP(SaaS)が効果的です。
クラウド型ERP(SaaS)とオンプレミス型ERPそれぞれにメリット・デメリットがあります。自社のシステムが抱える現状の問題に照らし合わせて、最適な導入形態を検討しましょう。
課題解決につながる機能は搭載されているか
ERPシステムにはさまざまな機能があります。しかし、すべての機能があれば自社の課題解決につながるとは限りません。ERPシステムの導入でカバーする業務範囲が広ければ広いほど、導入費用も高額になります。
そのため、ERPを導入する前に要件定義を行いましょう。事前にユーザー部門のニーズをヒアリングし、それに対するシステムの解決策を考えておけば、ERPシステムでどのような機能が必要なのかを明確にしておけます。
自社の業務プロセスにフィットするか
オンプレミス型ERP、クラウド型ERP(SaaS)はそれぞれシステムの導入方法に違いはあるものの、サービスによって得意・不得意の分野があったり、標準仕様が自社の業務プロセスにフィットしない場合があります。
ERPシステムを導入する際は、各ベンダーごとにどのような業種や事業規模の法人を得意としているのかを事前にリサーチしておきましょう。
導入・運用時のサポートは充実しているかどうか
クラウド型ERP(SaaS)導入時の注意点として、導入だけでなく、実際にERPシステムを運用する際のサポート体制が充実しているかどうかも重要な選定基準です。
なぜなら、導入サポートが不十分だと、現場のユーザー利用率が下がり、結果としてERPの導入費用が無駄になってしまうリスクがあるからです。手厚いサポートをしてくれるベンダーを選ぶために下記の4点を確認しておきましょう。
- 導入コンサルティングの有無(業務プロセスの整理や要件定義のサポート)
- 日本語対応かどうか(海外ベンダーの場合は特に重要)
- トラブル発生時の対応方法やリードタイム
- チャット・電話・メールなど複数チャネルの対応状況(回答のリードタイムも重要)
クラウド型ERP(SaaS)を提供するベンダーの中には専任の担当者がついてくれる場合もあります。上記4点を導入前に確認しておきましょう。
従業員が使いこなせるか
ERPシステムは営業部門や製造部門、経理部門など全社のさまざまな職種の従業員が利用します。そのため、誰にとっても使いやすい製品でなければなりません。
逆に、ERPシステムが使いにくかったり、各部門の業務改善に貢献しないと判断された場合、手元でのエクセルデータの手集計や属人化から抜けられない可能性があります。
誰にとっても使いやすいERPを選ぶために以下のような点に注意して選びましょう。
- マニュアルなしでも使えるほど直感的に操作しやすい作りになっている
- スマホ・モバイルアプリに対応している
- 役職や部門に応じた画面設計ができて、必要最小限の情報が表示できる
- 日本語に対応しており、ヘルプページも充実していてわかりやすい
- 各部門の業務フローに応じた柔軟な画面設計ができる
以上の点に注意してERPを選定すれば、現場のユーザーの利用率が上がるでしょう。ベンダーによってはトライアルやデモが可能な場合もあるので、実際の使用感を確かめておくと導入がスムーズになります。
情報セキュリティ対策は万全か
ERPは取引先の情報や社員情報などの機密情報を大量に扱うため、情報セキュリティ対策を万全にしておく必要があります。
なお、クラウド型ERP(SaaS)とオンプレミス型ERPではセキュリティレベルが異なります。そのため、導入形態ごとにどのような対策が必要なのかをあらかじめ知っておきましょう。クラウド型ERP(SaaS)とオンプレミス型ERPのセキュリティ項目に関する違いは以下の通りです。
比較項目 |
クラウド型ERP(SaaS) |
オンプレミス型ERP |
セキュリティ対策 |
ベンダーが高度な セキュリティを標準提供 例:暗号化/認証/監視/アップデート |
自社で設計・運用。 自由度は高いものの、 体制次第では脆弱性が放置されやすい |
メンテナンス |
パッチ適用・アップデートが自動。 脆弱性対応が迅速 |
手動対応が必要。 更新が遅れるとセキュリティリスクが増加 |
データ管理 |
クラウド上に保存。 ベンダーが暗号化や バックアップを管理 |
社内にデータを保持。 物理的な隔離も可能で、 外部からのアクセスを制限できる |
障害・攻撃リスク |
インターネット経由のため、 DDoS攻撃やサービス停止の影響を 受けやすい |
社内ネットワーク内で閉じていれば 外部からの攻撃には比較的強い |
管理負担 |
ベンダー側で管理するため 負担は軽減。また専門知識も不要 |
専門人材と継続的な運用コストが必要 |
向いている企業 |
IT体制が弱い企業、コストを抑えたい企業、迅速な導入を求める企業 |
セキュリティ要件が厳しい企業、IT人材が豊富な企業、カスタム制御が必要な企業 |
自社にERPのセキュリティ対策を実施できる人材がいる場合はオンプレミス型ERPを導入しても、対応できます。一方、ITセキュリティに詳しい人材が不足している場合は、自社でセキュリティレベルを担保できないため、クラウド型ERP(SaaS)を検討しましょう。
導入実績は豊富か
導入実績が何社あるかは、ベンダーの技術力の信頼度を測る1つの目安になります。特にクラウド型ERP(SaaS)の導入実績はサービスの汎用性の高さを示します。なぜなら、1つのパッケージシステムに対して導入者数が多いほど、さまざまな業界や事業規模に対応できるシステムだからです。
なお、ERPシステムは、海外のベンダーが開発している場合もあるため、導入実績が多く、なおかつ日本での販売実績やシステムが日本語に対応しているかどうかを事前に確認しておきましょう。
企業規模別に見るERPの選び方
ここまで、ERPの基本的な選び方を紹介してきました。一方で、自社の事業規模で見ると、どのようにERPを選べばよいのかわからない方もいるでしょう。以下で、企業規模別にERPの選び方を紹介します。ERPには主に2つのタイプがあります。
項目 |
クラウド型ERP(SaaS) |
コンポーネント型ERP |
概要 |
すべての業務機能が1つに統合された オールインワンのERP |
会計・財務機能や販売管理機能など、 必要なモジュールごとに 導入・連携ができる柔軟なERP |
特徴 |
データの一元管理、リアルタイム連携 |
業務や部門に応じた拡張がしやすい |
柔軟性・拡張性 |
低め ※全体最適が前提 |
高い ※必要に応じて機能追加・外部連携可能 |
導入コスト |
高め |
中程度 |
導入スピード |
遅め |
中程度 |
向いている企業 |
大企業・全社最適を目指す企業 |
成長中の中堅企業・ 段階的導入を希望する企業 |
大企業向けのクラウド型ERP(SaaS)
統合型ERPとは、販売管理・生産管理・会計管理・人事管理など、社内のさまざまな業務を1つのERPシステムで一括管理するものです。
オールインワンタイプのERPシステムであるため、組織が細かく分かれてなおかつ扱う商品群やデータ量も多い大企業に適しています。複数の部門、海外拠点などさまざまな情報を一元管理することで製品の製造工程から販売実績まですべてのデータを一気通貫で管理できることがメリットです。
一方、オールインワンでの導入が前提であるため、導入コストは高く、導入までのリードタイムは長期間になります。会社全体のお金や商品の流れを一元管理したい場合は、統合型ERPを検討しましょう。
中規模~小規模企業向けのコンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPは、会計・販売・在庫・人事など必要な業務機能ごとに導入範囲を選択できる柔軟性の高いERPシステムです。
各機能ごとに独立させることも、連携させて組み合わせることも可能なため、統合型ERPよりも導入費用を削減できます。そのため、統合型ERPでは機能が多すぎたり、必要な機能を見極めて少しずつ導入を進めたい中規模~小規模企業に適しているでしょう。
まとめ
ERPは会社のあらゆる経営情報を一元管理できる便利なシステムです。その一方で導入には多額の費用がかかるため、失敗できないという厳しい一面があります。今回紹介した内容をもとに選定を慎重に進め、自社に最適なERPを選びましょう。

KCCSマーケティング編集部
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