KYOCERA 京セラコミュニケーションシステム株式会社

ERP導入で注意すべきセキュリティリスクとは?安全に運用するための対策を徹底解説

ERP導入で注意すべきセキュリティリスクとは?安全に運用するための対策を徹底解説

ERP(Enterprise Resource Planning)は、売上・人事・在庫などの企業データを一元管理する基幹システムです。近年では、ERPを狙ったサイバー攻撃や情報漏洩が増加し、業務停止・データ損失・信用失墜といった深刻な被害が相次いでいます。本記事では、ERP導入時のセキュリティリスクの実態と、安全に運用するための最新対策をわかりやすく解説します。

 

目次


ERPのセキュリティリスクが高い理由

ERPは財務・人事・在庫・顧客など、経営の中枢データを一元管理するシステムです。この統合性こそが業務効率化を支える一方で、攻撃者から見ると“すべての情報が一か所にある魅力的な標的”になります。これらのデータは競合他社や攻撃者にとって価値が高く、外部からの不正アクセスや情報窃取の標的となりやすいのです。また、現在のERP環境は他の業務システムと連携するため常にインターネットに接続されており、外部からの攻撃を受けやすい状況です。さらに、ERPは企業全体で使用される大規模システムであるため、セキュリティ更新を行う際には全部門への影響を慎重に検証する必要があり、対応に数週間から数か月を要することも珍しくありません。この対応の遅れが脆弱性を放置する結果となり、攻撃者に狙われるリスクを高めているのです。

ERPを狙うセキュリティ上の脅威

ERPには様々なセキュリティリスクが存在しており、企業に深刻な被害をもたらす可能性があります。ここからは、実際に発生している主要なセキュリティ脅威の手口と影響を、具体的に紹介していきましょう。

サイバー攻撃(情報窃取・サービス妨害等)

外部からの悪意あるサイバー攻撃は、ERPにとって深刻な脅威の一つです。攻撃者は長期間にわたり、標的企業を調査し、脆弱性を突いてERPに不正侵入するケースが増えています。

深夜に何者かがERPに不正侵入し、顧客データなどの機密情報を盗み出すなどのケースが想定されます。盗まれた情報は売買され、企業は損害賠償請求と顧客離れで売上が減少するリスクがあります。また、DDoS攻撃でERPが停止すると、受注から出荷まで全業務が停止し、多額の損失を被る恐れもあるのです。

ランサムウェアによるデータ人質化

ランサムウェア攻撃とは、ERP上の重要データを暗号化し、復旧と引き換えに金銭を要求するサイバー犯罪です。具体的な手口としては、例えばERPにログインを試みると、画面に「企業のデータを暗号化した。期限内に1億円を支払わなければ、データは復元不可能になる」などの警告メッセージが出て、データが全て人質に取られます。データ復旧作業の間は手作業での対応となり、人件費が追加発生し、会社にとって大きな損失となるなどのケースがあります。

組織的犯罪による標的型攻撃

犯罪組織による標的型攻撃は、企業や個人など特定のターゲットに対して巧妙なメールを送って添付ファイルやリンクをクリックさせ、重要な情報を盗む手口です。

例えば、情報システム部長の名前で「緊急のシステム更新が必要です」という巧妙に偽装されたメールがIT担当者に届きます。担当者が疑いもせずにリンクをクリックした瞬間、ERPにウイルスが感染するなどのケースがあります。

正規ユーザーによる不正アクセス

ERPへの正当なアクセス権を持つユーザーが、その権限を悪用する恐ろしいケースもあります。IDとパスワードの使い回しなどが代表例です。ユーザーごとに各機能ごとのアクセス機能を制限したり、退職者のアカウントはタイムリーに削除するなどの対応をしない限り、誰でも自由に会社の重要な情報を持ち出せてしまいます。

内部不正のリスク

外部の攻撃だけでなく、内部で不正が起こるリスクもあります。ERPで架空の外注費を巧妙に計上し、偽の請求書を作成して自分の口座に振り込むなどの手口があります。承認フローや操作ログ監査といった統制機能を備えていないERP環境では、不正検知が困難になり、内部犯行が長期間発覚しないリスクもあります。

オンプレミスERPの脆弱性対応遅延

自社運用のオンプレミスERPに潜む脆弱性のリスクもあります。オンプレミス型のERPは、アップデートやシステムメンテナンスを行えるIT人材が必要です。しかし、自社でIT人材が不足していると、システムメンテナンスの対応が後手に回り、サイバー攻撃を受けるリスクが高くなります。

ERPを安全に運用するためのセキュリティ対策

このようなセキュリティ被害を防ぐためには、多層的なセキュリティ対策が必要不可欠です。ここからは、ERPを確実に守るための効果的な対策方法について詳しく紹介します。

データ暗号化(保存時・通信時)

ERPのデータ暗号化は、情報漏洩リスクを減らす対策です。保存時暗号化では、データベースに保管される顧客情報や財務データを特殊な暗号技術で変換するため、ハッカーがサーバーに侵入しても内容が解読されにくくなります。通信時暗号化では、社内ネットワークやインターネット上でやり取りされる全てのデータが暗号化されるため、盗聴や改ざんの防止が可能です。この二重の対策により、万が一システムが攻撃を受けても機密情報の流出リスクを軽減できます。さらに、顧客データの完全保護により顧客からの信頼を獲得し、コンプライアンス要求にも対応できるため、競争優位性を発揮できるでしょう。

アクセス制御強化

ERPのアクセス制御強化は、内部からの脅威に対するセキュリティ対策です。各従業員の役職と業務内容に応じて、必要最小限のデータにのみアクセスできるよう厳格に制限し、余計な権限は一切与えません。また、人事異動や退職時には権限を変更・削除します。さらに、全てのアクセス履歴を詳細に記録し、誰がいつどのデータを閲覧したかを完全に追跡できる体制を整えるのです。

アクセス制御が強化されることにより、内部不正や情報漏洩を根絶でき、経営層も従業員も安心して業務に専念できます。透明性の高い組織運営により顧客や株主からの信頼が飛躍的に向上し、企業価値の向上を実現できるでしょう。

エンドポイント保護・侵入防止

エンドポイントの保護と侵入防止システムは、ERPを守る重要なセキュリティ対策です。エンドポイントとは、ネットワークに接続される末端の機器(パソコンやスマートフォン、タブレットなど)です。社内の全デバイスに最新のセキュリティソフトを導入し、ウイルスやランサムウェアの侵入を防ぎます。また、ネットワーク侵入防止システムが不審な通信を監視し、攻撃の兆候を察知した瞬間、自動的に遮断するものです。この二重の対策により、外部からのサイバー攻撃を完全に水際でシャットアウトでき、経営陣も従業員も「ウイルス感染の心配」をすることなく安心して業務に専念できるようになります。

多要素認証(MFA)

多要素認証は、ERPへの不正ログインを防ぐ対策です。従来のパスワードだけでなく、スマートフォンアプリから送信される認証コードやSMSでの確認コード入力を必須とすることで、パスワードが盗まれても不正ログインを阻止できます。この二段階認証により、外部からのなりすまし攻撃を防げるメリットがあります。初期設定の後は、簡単なコード入力だけで済むため、業務効率を損なうこともありません。経営陣は情報漏洩リスクを大幅に軽減しつつ、ERPを基盤とした攻めのデジタル経営に集中できるでしょう。

社内教育・セキュリティポリシー策定

従業員のセキュリティ教育とポリシー策定も、人的ミスによる情報漏洩を防ぐ重要な対策です。フィッシングメールの巧妙な手口、強固なパスワード作成方法、機密データの適切な取り扱いルールを定期的に教育し、全社員のセキュリティリテラシーを向上させます。また、明確な処罰規定を設けることは、違反行為への抑止効果も発揮するでしょう。この継続的な教育で、従業員一人ひとりが、うっかりミスによる情報漏洩を削減できます。結果として企業全体に強固なセキュリティ文化が根付き、取引先からの信頼を獲得し、セキュリティ意識が高く、信頼できる会社になれるでしょう。

パッチ・ソフトウェア更新管理

ERPのセキュリティパッチを計画的に自動適用する管理体制により、脆弱性を悪用した攻撃を防げます。定期的なテストと段階的な適用プロセスにより、業務への影響を最小限に抑えながら最新のセキュリティレベルを維持できます。

第三者監査・セキュリティスキャン導入

第三者機関による専門的なセキュリティ監査と定期的な脆弱性スキャンにより、自社では気づけないリスクを客観的に発見できます。継続的な専門評価により、各種コンプライアンス要求へ確実に対応でき、業界標準を上回るセキュリティ体制を構築して、取引先からの信頼を獲得し、安心してビジネス展開を進められるでしょう。

クラウド型ERP(SaaS)への移行

クラウド型ERP(SaaS)への移行は、セキュリティの課題を解決する有効な手段です。専門ベンダーが最新のセキュリティ技術・監視体制を提供し、脆弱性パッチや更新が自動適用されることで、常に最新かつ安全なERP環境を維持できます。世界最高レベルのデータセンターでの物理的保護と、サイバー攻撃に対する多層防御により、強固なセキュリティ対策が可能です。この移行により自社のセキュリティ運用コストを大幅に削減しながら、IT部門は戦略的なデジタル変革に専念でき、経営陣は「システム障害の心配」から解放され、安心して新規事業開拓や海外展開などの成長戦略に集中できるでしょう。

まとめ

ERPのセキュリティリスクは、企業の信頼と事業継続に直結する重大な課題です。ERPを導入すると、会社の重要な財務データや生産管理データ、顧客データや人員データなどが連携します。そのため、いずれかのシステムがサイバー攻撃を受けると、他の連携しているシステムやデータも影響を受けることになります。結果として、復旧までに数週間を要し、その間は会社の業務がストップしてしまう場合もあります。

 

ERPを導入予定の企業では、ERPの設計段階からセキュリティについても事前に検討しておく必要があります(セキュリティ・バイ・デザイン)。各ユーザーごとの権限最小化や異常検知・ログ監視などセキュリティに関する被害を受けた場合でも素早く異常を検知してすぐに復旧できるようにしておけば安心です。

 

IT技術がこれだけ進歩している時代、どれだけセキュリティ設計を堅牢にしてもサイバー攻撃のリスクは残ります。被害を受けてもすぐに回復できる体制が整っている企業こそ、これからの時代を安全に生き残るでしょう。SaaS型ERPのInforであれば、これからの時代にも対応するセキュリティ設定が標準機能として備わっています。

 

グローバルスタンダードで、世界全体で60,000社が導入済みで、高い安全性を誇ります。セキュリティに強いERPをお探しの方は、ぜひInforをご検討ください。

 

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