ERPでDXを推進する方法とは?具体的な手順を解説
企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を踏まえた全体最適を図るうえで、ERPの導入は欠かせません。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、財務・販売・在庫・製造など企業の基幹業務を統合し、データを一元管理するシステムです。業務効率化や情報のリアルタイム活用を可能にし、迅速かつ精度の高い経営判断を支援します。本記事では、ERPを活用してDXを実現する具体的な方法や手順を解説するので、DXにおけるERP導入の検討に役立ててください。
目次
ERPで実現するDXとは
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業がITを活用して業務や組織の仕組みを変革し、ビジネス全体の最適化を目指す取り組みです。DXを支える基盤として、ERPは極めて重要な役割を担います。ERPにより複数の業務データを統合すれば、部門間の情報共有が円滑になり、経営判断や意思決定のスピードと正確性が大幅に向上します。また、ERPを導入することで従来の手作業や分散管理による非効率を解消でき、DXの目的である業務プロセスの改善や新しい価値創出が実現しやすくなります。企業のDX戦略において、ERPの適切な活用は成果のカギとなるでしょう。
DXが求められる背景
企業がDXを推進する要因は、技術革新、市場環境の変化、働き方改革などさまざまです。ERPで業務データを一元管理することで変化に迅速に対応できる組織体制の構築が可能となり、経営判断や業務改善を加速させます。以下で、DXが求められる背景をさらに深掘りしていきます。
「2025年の崖」問題への対策が必要
「2025年の崖」と呼ばれる問題への対策として、ERPは有効であると考えられています。「2025年の崖」とは、老朽化した既存システムを維持し続けることで、保守コスト増大・ブラックボックス化・技術的負債・人材不足による運用困難が生じ、結果として企業の競争力が大幅に低下するリスクを指します。
代替案として、クラウド型ERP(SaaS)は特に有効です。HWやセキュリティ対策、運用等がメーカー側から提供されるため、人材不足による運用困難が少なくなり、定期的にアップデートもされるため、将来の老朽化対策にもなります。
働き方改革の実現が必要
現代社会において、働き方改革の実現は必要不可欠です。働き方改革における業務の効率化や柔軟な働き方の実現には、部門間の情報連携が欠かせません。特に、クラウド型ERP(SaaS)を導入すると、会計、販売、製造などのデータが統合され、リモート環境や分散環境であっても正確な情報に基づいた業務遂行が可能になります。
また、ERPは作業の自動化やデータ分析を容易にする機能も備えており、従業員が本来の付加価値業務に集中できるようになるため、働き方改革の目標達成に大きく貢献するでしょう。
市場の変化に対応が求められている
市場における消費者のニーズや競合環境は、常に変化しています。ERPによるデータ統合とリアルタイム分析があれば、販売状況や在庫情報を即座に把握でき、需要変動に応じた適切な生産計画や販売戦略の再調整が可能です。さらに、ERPを通じて部門間の情報連携も強化されるため、迅速な意思決定や業務改善も同時に実現できます。データを用いた柔軟な対応力こそ、DX推進におけるERP活用の大きなメリットです。
ERPでDXを円滑に実現する3ステップ
DXを円滑に推進するには、段階的なアプローチが不可欠です。ERPを活用した3つのステップを順番に実行することで、業務プロセスの効率化やデータを最大限活用することなどが可能になります。ERPは各部門のデータを統合し、リアルタイムで情報を活用できる環境を提供するため、改善点の特定や意思決定の迅速化にも寄与します。ここでは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」という3つのステップを紹介します。
STEP1:デジタイゼーション
「デジタイゼーション」は、既存の業務プロセスや紙ベースの情報をデジタル化するステップです。デジタイゼーションでERPを活用することで、会計、在庫、販売などのデータをシステム上で一元管理できるようになり、手作業による記録や転記の手間を大幅に削減できます。ERPの一元管理により情報の正確性が全社で高まり、日常業務の効率化と従業員負荷の軽減を同時に実現できます。
STEP2:デジタライゼーション
「デジタライゼーション」は、デジタル化したデータを基に業務プロセスの最適化を行う段階です。ERPの統合データを活用すれば、部門間の連携や承認フローを見直し、二重入力作業や非効率を解消できます。さらに、ERPによる分析結果をもとに改善点を明確化できるため、経営判断や計画策定の意思決定リードタイムの短縮と予実精度の向上が期待できます。結果として、組織全体の生産性も大幅に高まり、業務全体の効率化が確実に進みます。
STEP3:デジタルトランスフォーメーション
「デジタルトランスフォーメーション」は、全社的に業務や組織の仕組みそのものを変革し、ビジネス全体の最適化を目指す段階です。ERPを基盤にすることで、正確かつリアルタイムなデータ活用や業務の自動化が可能となり、新しいサービスやビジネスモデルの創出につなげられます。さらに、ERPを通じて部門間の情報連携も強化され、企業全体でデータを最大限に活用する体制を構築できる点も大きなメリットです。
DXを実現する際のERPの役割
DXを推進するうえで、ERPは企業の情報基盤として欠かせません。ERPを活用すれば複数の業務データが統合され、リアルタイムで可視化されるため、経営判断や業務改善のスピードと精度を大幅に高められます。さらに、ERPを導入することで部門間の情報連携を強化し、承認フローや業務プロセスの標準化・自動化を可能にし、DXにおける変革の成果を最大化できるでしょう。ERPは、企業全体でデータを活用し、競争力を強化するための基盤としての役割を担います。
DXの実現にクラウド型ERP(SaaS)がおすすめな理由
クラウド型ERP(SaaS)は柔軟性が高く、導入スピード向上・運用負担軽減・全社データの一元管理を同時に実現します。DXを推進する企業にとって、クラウド型ERP(SaaS)は効率的かつ安全な選択肢となります。以下でクラウド型ERP(SaaS)がおすすめな理由を詳しく紹介します。
需要変動への即応(在庫・生産・販売の一体最適)
クラウド型ERP(SaaS)では、全社のデータが一気通貫かつリアルタイムで更新されます。そのため、需要変動や市場環境の変化にも迅速に対応可能です。正確かつ迅速なデータ共有と分析により、生産計画や販売戦略の見直しも即座に行えます。部門間の連携強化や意思決定のスピード向上にも寄与するため、ビジネスの柔軟性と競争力を大きく高められるでしょう。クラウド型ERP(SaaS)の活用は、新たなビジネスチャンスの獲得にもつなげられます。
アップデートの管理が不要になるため
クラウド型ERP(SaaS)では、システムのアップデートやバージョン管理がベンダー側で自動的に行われるため、ユーザー企業側での専門的な管理は必要ありません。常に整備された最新機能やセキュリティ対策を安心して利用できるため、運用負荷を大幅に削減し、IT部門のリソースを他の業務に集中させられます。手間を削減しつつ最新システムを利用できる点は、クラウド型ERP(SaaS)ならではの大きな強みです。
業務プロセスの効率化が可能になるため
クラウド型ERP(SaaS)では、部門間のデータ連携や承認フローを自動化でき、手作業の重複や非効率を大幅に削減できます。業務全体の効率化が進み、従業員が付加価値の高いコア業務に集中できる環境を整えられるでしょう。さらに、業務の進捗状況をリアルタイムで把握できるため、問題発生時にも迅速に対応可能です。組織全体の生産性向上とDX推進をさらに促進してくれるため、クラウド型ERP(SaaS)は業務プロセス改善の基盤として有効と考えられます。
常に最新のセキュリティ対策がされるため
クラウド型ERP(SaaS)は、常にベンダー側によってセキュリティ対策が最新の状態に保たれています。最新のセキュリティを備えているため、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクを最小限に抑えつつ、安心してデータを活用することが可能です。脆弱性対応や監査ログ管理が標準で継続実施されるため、セキュリティ管理の手間も大幅に削減できます。ERP導入にあたってのセキュリティ負荷の軽減は、DX推進を安全かつ効率的に進めるうえで欠かせません。
導入コストを抑えられるため
オンプレミス型に比べると、クラウド型ERP(SaaS)は初期の導入費用やハードウェアコストを抑えられる傾向にあります。また、標準機能の優先採用と段階導入で、過度なカスタマイズ費用を抑制しつつDXを推進することが可能です。
さらに、クラウド型ERP(SaaS)は、運用や保守もベンダー側が対応するため、自社ではベンダーへの発注コストと人件費の負担も軽減できます。クラウド型ERPのコスト効率の良さは、大きなメリットといえるでしょう。
ERPでDXを推進する方法・注意点
DXを推進するうえでERPを活用するには、現状の課題把握や組織体制の整備、目的の明確化など、段階的かつ計画的な対応が必要です。ERPの選定・導入・運用定着までを見据えて導入を進めることで、DX推進の効果を最大限に発揮できます。以下でERPでDXを推進する方法と注意点を紹介します。
現状のシステムの課題点を洗い出す
最初に、既存のシステムや業務プロセスの現状を把握し、課題やボトルネック(非効率を生み出している部分)を明確にします。例えば、データの分散管理、手作業による情報処理、システム間の連携不足、重複作業などが課題として挙げられるでしょう。現状の課題やボトルネックを洗い出すことで、ERP導入で改善すべき具体的なポイントが見えてきます。丁寧な現状分析は、DX推進を成功させるために欠かせない第一歩です。
社内のERP導入体制・組織をつくる
ERPを活用してDXを推進するには、導入体制や組織を整えることが重要です。事前にERP導入に関するプロジェクトリーダーや各部門の担当者を明確にし、役割分担を決めることで、導入プロセスを円滑に進められるでしょう。加えて、社内の関係者全員にERP導入の目的やメリットを共有し理解を深めることで、抵抗感を減らし、スムーズな運用定着につなげられます。
DXの目的を明確にする
ERPを活用したDXを成功させるには、まず企業としてのDXの目的を明確にすることが重要です。売上向上や業務効率化、顧客満足度向上など、達成したい成果を具体的に設定することで、ERP導入時に必要な機能やプロセス改善の優先順位を判断できます。また、社内でERP導入の目的を共有することで、関係者全員が一体となってDX推進に取り組みやすくなり、導入効果の最大化につながるでしょう。
ERPを選定する
DX推進に向けてERPを導入する際は、自社の目的達成に必要な機能を備えたシステムを選定することが重要です。販売、在庫、会計、製造など、業務ごとの要件を事前に整理し、将来的な拡張性やクラウド・オンプレミスの選択肢も考慮してください。自社に適したERPを選ぶことで導入後の運用効率が高まり、業務プロセスの改善やデータ活用をスムーズに進められ、DX推進の効果を最大化できるでしょう。また、最適なERPを選ぶとカスタマイズにかかる手間やコストも削減できます。
導入・移行を進める
ERPの導入・移行段階では、既存システムからのデータ移行や業務プロセスの適合確認が重要です。現状を踏まえてERP導入への移行計画を綿密に立て、テスト環境で十分な検証を行うことで、本番稼働時のリスクを最小化できます。ERPは一気に導入するのではなく、段階的に進めることで現場の混乱を防ぎ、スムーズな定着につなげられるでしょう。ERP導入後の運用ルールを事前に明確にしておき、トラブル対応フローを整えることで、安定的なシステム稼働と業務改善を実現できます。
ERPの運用定着に向けたサポートをする
ERP導入は、ゴールではなくスタートです。導入後も定期的に業務プロセスを見直したり、システム設定や機能を最適化したりすることで、効果的かつ持続的にERPを活用できるでしょう。例えば、各部門からのフィードバックを反映し、業務効率化や新たなニーズに対応できるように改善を重ねることで、ERPの効果を最大化できます。継続的な改善サイクルを回すことで、DX推進の成果を長期的に維持し、企業の競争力強化につなげられるでしょう。
まとめ
ERPを活用したDX推進には、現状分析、導入体制の整備、目的の明確化、適切なERP選定、導入・移行、教育・定着、運用改善の各ステップが欠かせません。Infor ERPは、製造業に必要な多くの機能を標準で備え、部門間のデータ連携を強化します。これにより、連携不備のリスクを最小限に抑えつつ、業務全体の最適化とDX推進を同時に実現できます。製造業のDX推進に向けた選択肢として、Infor ERPは有力な選択肢です。

KCCSマーケティング編集部
京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)のマーケティング編集部より、製品およびサービスに関連する有益な情報をお届けいたします。お客様にとって価値ある情報を提供することを目指します。
- 記載の製品ならびにサービス名および会社名などは、それぞれ各社の商標または登録商標です。
- サービス内容は予告なく変更する場合があります。
- 掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
- KCCSは京セラコミュニケーションシステムの略称です。
関連サービス