ERPとMESの違いを徹底解説|製造業における役割・導入メリット・連携の注意点
製造業において、経営資源を一元管理する「ERP(企業資源計画)」と、生産工程の管理を行う「MES(製造実行システム)」は業務効率化や生産管理の改善に欠かせないシステムです。ERPとMESは製造業DXやスマートファクトリーの基盤システムとしても注目されています。本記事では「違い→導入メリット→連携の注意点→選び方」までを体系的に解説します。
目次
ERPとMESの違い
ERPは経営資源を統合管理して全社最適化を実現するシステム、MESは製造現場の実行管理を担うシステムです。対象範囲と目的が異なるため、両者を区別して理解することが重要です。以下でERPとMESの違いを紹介します。
ERPの主な機能と目的
ERPの代表的な機能は次の5つです。・販売管理/・購買管理/・生産管理/・会計/・人事
これらを一元管理することで、部門横断のデータ連携が進み、迅速で正確な経営判断を支援します。経営層にとっては全社情報をリアルタイムで把握できる点が最大の価値です。
MESの主な機能と目的
MESの主な機能は生産指示の配信、進捗トラッキング、品質トレース、設備稼働監視です。ERP(計画・統合)に対し、MESは実行・現場最適に強みがあります。ERPが経営全体を管理するのに対し、MESは「現場改善」に直結する点に強みがあります。
ERPとMESの違いを表で解説
ERPとMESは目的や管理対象が異なるため、役割を明確に理解することが大切です。以下の表に、両者の違いをまとめました。
| 項目 | ERP | MES |
| 管理対象 | 経営資源全般 経営・販売・購買・在庫・会計など |
製造現場の作業実行 |
| 主な利用部門 | 経営層、管理部門営業、購買、経理 | 生産部門、製造現場 |
| 機能 | 販売・購買・生産・会計・人事の統合管理 | 生産指示、進捗管理、品質管理、設備稼働監視 |
|
目的 |
経営効率化、業務の一元管理 |
生産効率向上、現場改善 |
| 情報の粒度 | マクロ(会社全体) |
ミクロ(現場単位) |
| 導入効果 | 部門間のデータ連携強化、意思決定の迅速化、コスト削減 | 生産リードタイム短縮、不良率低減、現場の見える化、設備稼働率向上 |
ERPは全社最適(マクロ)、MESは現場改善(ミクロ)。この役割分担の理解が導入成功の第一歩です。
ERP・MESが製造業で求められる理由
製造業では、多くの企業で人手不足や高齢化により熟練技術者が減少し、業務の属人化が深刻な課題となっています。課題が深刻化する中で、効率化と標準化が不可欠です。さらに、ERPとMESは製造業DX/スマートファクトリー/トレーサビリティ強化の基盤として注目されています。属人化解消や標準化、リアルタイム可視化の実現にも有効です。ERPとMESを導入することで、経営全体と現場の情報を一元管理して連携させ、作業指示や生産計画を効率的に管理できます。その結果、人的ミスの削減や業務の可視化が進み、限られた人材でも安定した生産活動が可能になるのです。
ERP・MESを導入するメリットを表で解説
ERPとMESの導入には、それぞれ企業の課題に応じたメリットがあります。以下の表に導入メリットと解決できる課題をまとめました。ERP・MESの導入を検討する際の参考にしてください。ERP=意思決定の迅速化と統制/MES=リードタイム短縮・品質向上・稼働率向上。「効く層の違い(経営層×現場)」を押さえるのがポイントです。
| システム | 導入メリット | 有効な課題 |
| ERP | ・経営資源の一元管理 ・業務フローの標準化 ・リアルタイムでの経営判断 |
・部門間の情報分散 ・データ集計作業の負担 |
| MES | ・生産現場の進捗管理 ・品質管理 ・設備稼働率向上 |
・生産効率の低下 ・現場作業の属人化 ・不良品の発生 |
ERPは経営全体の効率化、MESは現場の作業改善に特化しており、両者を組み合わせることで企業全体の生産性向上につながります。導入前には必ず自社が抱える課題を洗い出し、ERPやMESで解決できるものなのかよく検討しましょう。
ERPとMESを導入する際の注意点
ERPとMESは連携することで効果を発揮しますが、導入の順序や計画を誤るとトラブルの原因になります。一般的には、ERPで基盤を整備→MESで現場実行を高度化が推奨されます。ERPが未整備のままMESを入れると、データ連携不全で進捗管理・資材調達に不整合が生じやすくなります。
また、現場の作業フローやデータ定義の確認が不十分だと、かえって作業効率の低下を招くこともあるため注意してください。事前にシステム全体の構造を把握し、関係者と連携して計画を立て、導入後は定期的な運用レビューで現場の声を反映しながら改善を続けることが成功の鍵です。計画と運用を両立させて、ERPとMESの効果を最大限に引き出しましょう。
ERPとMESを連携させるメリット
ERPとMESを連携させることで、製造プロセスの改善と経営全体の効率化を同時に実現させることが可能です。例えばMESで現場の稼働状況を把握しつつERPで資材調達や人員配置を最適化することで、計画と実行のズレを最小限に抑えられます。ただし、連携時には「データ定義の違い」「時間情報のずれ」などに注意が必要です。連携時の注意点を事前に把握しておくことで、運用を成功に導くことができるでしょう。
ERPとMESを連携させる際の注意点
ERPとMESを連携する際には、システム間のデータ整合性を確保しなければなりません。ここで起こり得るリスクとしては、時間情報のずれ、情報共有不足、定義の違いによるデータ不整合、連携トラブルなどが挙げられます。以下でERPとMESを連携する際の注意点を紹介します。
時間情報のズレとは?(ERPとMESでの時刻・単位の不一致)
生産スケジュールや作業の開始・終了時間、さらに管理する時間の単位がERPとMESで異なると、進捗管理に誤差が生じます。進捗管理の誤差が発生した場合、納期遅延・手配ミス(資材/人員)に直結します。リスク回避のためには、時間情報の統一やリアルタイム更新を意識した設計が重要です。さらに、現場と経営部門で同じ情報を参照できないと、意思決定の遅れにもつながります。システム導入前にデータのフォーマットや更新ルールを確認し、社内で統一基準を定めることが効果的です。
ERPとMESで情報共有ができないリスク
ERPとMESの間でデータが正しく共有されないと、現場の作業指示と経営判断の情報がずれます。結果として、余剰在庫や生産計画の不一致など、会社全体に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。特に複数拠点での生産や多品種製造を行っている場合、情報のずれは大きな損失につながります。導入前にデータの共有方法やタイミングを明確化し、関係者全員が同じ情報を参照できる体制を整えることが重要です。
システム連携によるトラブルのリスク
ERPとMESの連携設定が不十分な場合、データ取り込みの失敗や重複入力、更新漏れなどのトラブルが発生します。連携不足によるトラブルは現場業務の停滞や意思決定の遅れにつながるため、事前にテストや確認を徹底しなければなりません。さらに、トラブルが発生すると改善策の実施や作業の再調整に、余計な時間とコストがかかります。システム連携の設計段階から運用フローを検証し、関係者間で責任の所在を明確にしておくことが重要です。
データの定義が異なるリスク
同じ項目名でもERPとMESで定義が異なる場合、データの解釈に違いが生じます。例えば製品番号・工程の定義・BOM構造などのデータ定義がERPとMESで異なる例が挙げられます。これらの定義が統一されていないと、分析結果や報告書が正確でなくなる問題につながります。さらに、データの不一致は経営判断や現場改善策の精度低下の原因にもなります。導入前に項目定義を明確化して関係者全員で共有することで、システム連携のトラブルを未然に防ぐことができ、運用開始後も安定したデータ管理が可能になるでしょう。
ERP導入時に自社に合うMESの検討が効果的
これまで紹介したERPとMESを連携させる際の注意点や課題は、ERP導入時にMES導入も同時に検討し、業務改革の一環に含めることで解決できます。ERPの中にはMES機能を有する製品もあるため、自社に合うのであれば共に検討するもの効果的です。データの不一致や情報共有の遅れを防ぎ、現場の作業効率と経営判断の正確性を同時に向上させられます。また、複数のシステムを個別に導入する場合と比べて、運用管理や保守の手間も軽減できます。導入前に、自社の生産プロセスや経営資源の管理範囲に合ったERPを選定することが、システム導入成功の重要なポイントです。さらに、統合されたシステムなら、将来的な機能の拡張や改善にも柔軟に対応できるようになります。
まとめ
ERPとMESを適切に導入し連携させることで、製造業における生産効率の向上や業務フローの標準化が可能です。特にMES機能が搭載されたERPを選ぶと、システム間のデータ不整合や連携トラブルのリスクを最小限に抑えるためおすすめです。KCCSが提供するInfor製品では、ERPとMES機能が標準で統合されており、現場と経営情報の一元管理が実現できます。導入前に自社の課題を整理し、最適なシステムを選定することで、スムーズで効果的なシステム運用ができるでしょう。
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KCCSマーケティング編集部
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