KYOCERA 京セラコミュニケーションシステム株式会社

ERPで全体最適を実現する方法と注意点【メリット・デメリットも解説】

ERPで全体最適を実現する方法と注意点【メリット・デメリットも解説】

部門ごとの最適化に限界を感じていませんか?今、多くの企業で注目されているのがERPによる“全体最適化”です。システム統合で部門間の連携を強化し、データを一元化することで迅速な意思決定が可能になります。本記事では、そのメリット・デメリット、導入時の注意点をわかりやすく解説します。

 

目次


ERPによる全体最適化とは

ERPを活用した全体最適化は、部門ごとに分かれていた業務を統合し、企業全体のシステムを一体化する重要な経営戦略です。リアルタイムでのデータ一元管理により全社レベルでの迅速で正確な経営判断が可能になります。ここでは、全体最適の定義や、ERPを使った全体最適の実現方法を紹介します。

そもそも全体最適化とは

全体最適化とは、企業全体の組織や業務がそれぞれの役割を果たしながら、経営目標に向かって最も効率的に連動して機能する状態を指します。個々の部門が独立して最適化を図る「部分最適」とは異なり、全社的な視点で各部門間の連携を強化し、企業価値の最大化を目指す経営手法です。例えば、営業部門の売上向上施策が在庫管理や生産計画と連動し、企業全体の利益拡大につながる状態が全体最適化の理想的な姿といえるでしょう。

全体最適と部分最適の違い

部分最適と全体最適の違いを下表にまとめました。

 

 

全体最適

部分最適

対象

企業全体

特定部門や業務ごと

目的

組織全体の効率化と企業価値の拡大

部門内での業務改善と作業効率の向上

効果

各部署の連携を強めデータ一元化で組織の効率向上

個別部門で処理速度が向上

情報管理

ERPで一元管理し瞬時に全社で共有可能

各部門で分散管理なためミスや重複作業が発生

課題

高コストや現場の不満

部門ごとの連携不備や二重入力、情報分散

ERPで全体最適を実現する方法

ERPで全体最適を実現する方法とは、ERPによって企業の全部門を統合し、組織全体が効率的に連携することです。部分最適では各部署が個別のシステムで業務を行っていましたが、ERPでは営業、生産、財務、人事などの業務が統合されます。部門間の情報共有がスムーズになり、データの二重入力の削減や意思決定の迅速化が可能です。生産性向上と競争力強化を同時に実現できる点こそが、ERPによる全体最適化の本質です。

ERPで全体最適化するメリット

ERPによる全体最適化は、各部署の業務プロセスを見直し、ERPを軸にした部門間連携の強化とデータ一元化によって、全社的な生産性向上を実現します。ここからは、合理的な経営が可能となる具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。

社内の業務プロセスを標準化できる

ERPの導入により、これまで部門ごとに異なっていた業務プロセスを全社共通の標準的な手順に統一できます。各部署でバラバラだった業務フローを一括管理することで、受注から売上計上までの流れを標準化し、業務の品質と効率を同時に高められます。見える化によって改善点を把握しやすくなり、継続的な改善も進めやすくなります。

経営陣の意思決定の精度とスピードが向上する

ERPにより各部署でバラバラだったデータを一括管理し、経営陣が知りたい情報をリアルタイムで入手できます。従来の月次レポートに依存した経営判断から脱却し、売上状況や顧客動向、コスト状況を即座に把握できるため、市場変化への迅速な対応が可能です。データの正確性も飛躍的に向上し、より精度の高い戦略策定ができます。スピーディーかつ正確な経営判断により、ライバル企業よりも優位に立ち、継続的な業績向上と成長が実現できるでしょう。

内部統制が強化される

ERPにより各部署に散在していたデータや業務を一つに集約でき、内部統制が強化されます。すべての取引や業務プロセスがシステム上で記録され、承認フローも明確になるため、不正やミスを防げるのです。契約から代金回収までの業務の流れが記録として残り、法令遵守が徹底されます。監査証跡も自動的に作成されるため、外部監査への対応も効率化でき、権限管理により情報セキュリティ強化も可能です。これらは企業の信頼性向上につながります。

ERPで全体最適化するデメリット

ERPにはたくさんのメリットがある一方で、導入時に注意すべきデメリットが存在するのも事実です。高いコストがかかったり導入期間が長期化したりするなど、事前に把握しておくべき課題を紹介します。

ERP導入には大きなコストがかかる

ERPは全社システムを統合する大規模ソリューションであり、導入には大きな投資が必要です。企業の全業務を対象にする必要があり、部分最適よりも最適化の範囲が広いことから多くのコストが発生します。ソフトウェアライセンス費用に加え、ハードウェア整備、システム構築、データ移行など様々な費用がかかるからです。社内調査やシステム検証テストなどのコストも発生します。

全体最適化まで時間がかかる

全体最適は大規模プロジェクトとなり、完了まで長期間を要します。システム設計から運用開始まで最低でも1年、企業規模によっては2~3年が必要です。その間も既存業務は停止できないため、段階的な導入が求められます。従業員の教育やマニュアル整備も並行して実施する必要があり、導入期間中は既存システムとの並行運用で一時的に業務負荷が増えることもあるでしょう。これらを理解したうえでの計画的な推進が重要です。

各部門すべての要望には応えるのが難しい

全体最適は会社全体での生産性を向上させる取り組みになるため、各部門すべての要求には応えられないケースが多いのも現実です。部門固有の業務プロセスに対し、標準的なERPパッケージでは対応できない場合もあります。特殊な業務要件に適合させるためカスタマイズが必要ですが、過度なカスタマイズはコスト増大とシステムの複雑化になりかねません。部門間での優先順位を考えて、全体最適の観点からバランスの取れた解決策を見つけます。

ERPで全体最適を図る際の注意事項

ERP導入を成功させるためには、事前の十分な準備と戦略的に進めることが不可欠です。プロジェクトの成功を左右する、重要な注意事項を詳しく見ていきましょう。

導入目的を整理しておく

ERPでの全体最適化は、経営層から現場まで幅広いメンバーに影響する大規模な取り組みです。導入目的に納得感がなければ反発を招き、プロジェクトが破綻したり、導入できても利用が進まず、投資効果が十分に得られないリスクがあります。業務効率化、コスト削減、内部統制強化など、具体的で測定可能な目標設定が重要です。経営陣は導入の背景や期待効果を明確に示し、全社員が納得できるよう丁寧に説明することが大切です。目的の明確化はプロジェクト成功の第一歩です。

経営層や関連部署の責任者と情報共有しておく

導入目的やプロジェクト進捗の情報共有を行うことで、無駄な衝突を避けて円滑にプロジェクトを進められます。経営層と各部門の責任者との密な連携は欠かせません。定期的な進捗報告会や課題共有の場を設け、プロジェクトの現状と今後の予定を関係者全員で共有します。営業、経理、人事など多岐にわたる部署との調整が必要です。各部門の業務特性や課題を理解し、それぞれの立場に配慮した対応により責任者レベルでの合意形成が可能となるでしょう。

全体最適と個別最適それぞれのKPIを設定しておく

全体最適化に向けた構想だけでは、絵に描いた餅になるおそれもあります。各部門や役職ごとに個別のKPIに落とし込むことで、計画に具体性が出てくるでしょう。企業全体での目標達成指標と併せて、各部門や職種ごとの個別KPIを明確に設定することが重要です。全体指標として売上高や利益率を、部門別指標として業務効率や顧客満足度などを設定しましょう。個別KPIの設定で各従業員が役割と貢献度を理解し、モチベーション向上につながります。

批判的なメンバーへの対応策を考えておく

ERP導入には「システムの置き換えで業務量が増えるのでは」「自部門はITリテラシーの低いメンバーが多いから難しいシステムだと使えない」など、反対勢力の意見をあらかじめ想定しておき、Q&A表を作っておきましょう。現場の不安や抵抗感を考慮し、具体的な改善事例やメリットを示して不安解消に努めます。段階的導入やトライアル運用でシステムの有効性を実感してもらい、反対意見も貴重なフィードバックとして取り入れ、改善につなげる姿勢が大切です。

まとめ

ERPによる全体最適化は、企業の競争力強化への戦略的投資です。業務プロセスの標準化、意思決定の迅速化、内部統制の強化などメリットがある一方、導入コストと期間、部門間調整の課題も存在します。成功には、導入目的の明確化、関係者との情報共有、適切なKPI設定、反対意見への対応が欠かせません。また、ERPベンダーの選定も成功を左右する重要なポイントです。海外拠点も含めた全体最適をお考えの企業様には、InforのERPクラウドソリューションをおすすめします。豊富な機能と実績でビジネス変革をサポートいたします。

 

 

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