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図書館DXを実践へ ~先端図書館の今~

図書館DXを実践へ ~先端図書館の今~

図書館DX(デジタルトランスフォーメーション)は、図書館運営の効率化や利用者体験の向上を目指す重要な取り組みです。本コラムでは、当社の具体的な取り組み事例を交え、図書館でのデジタル技術の活用方法についてご紹介します。

 

目次


これまでの図書館DXのあゆみ

当社では、「図書館をより便利に」をコンセプトに、図書館サービスの向上、図書館運営の効率化、SDGsについて先端技術を活用し取り組んできました。

過去6年間の当社の取り組み

過去6年間の当社の取り組み

 

過去6年間の取り組みのうち、赤字で示している部分は導入実績があるものです。こうした取り組みは、徐々にメディアや業界内で取り上げていただけるようになり、各種アワードを受賞するにいたりました。

受賞歴

  • 学校向けクラウド型図書館システム「ELCIELO for School」(2023年5月リリース)

    ASPICクラウドアワード2023 社会業界特化系ASPSaaS部門 社会貢献賞※1 受賞

    URL:https://www.aspicjapan.org/event/award/17/index.html

  • AI蔵書管理サポートサービス「SHELF EYE」(特許取得済)

    ASPICアワード2022 AI部門準グランプリ受賞

    URL:https://www.aspicjapan.org/event/award/16/

    ※1 ASPICクラウドアワードは、日本国内で優秀かつ社会に有益なIoT・AI・クラウドサービスを表彰し、事業者及びユーザの事業拡大及び業務効率化等を支援する団体です。これによってクラウドサービスの利用促進と市場創造により社会情報基盤を確立することを目的としています。 

メディア掲載歴

図書館DXの今

図書館のデジタル活用について、現在、当社では新たに「創造支援DX」、「視覚支援DX」、「ロボティクスDX」、「SDGs・アクセシビリティDX」の4つを軸とし、より発展的な取り組みを推進しています。

当社のDXの4つの軸

当社のDXの4つの軸

 

上記の取り組みを順番にご紹介します。

 

図書館DXの今 ~創造支援DX

「創造支援DX」では、生成AIを活用した図書館システムにより、選書やレファレンス業務を補助し図書館職員の業務時間を削減します。また、利用者目線では検索の補助などを行い、利便性向上を支援します。

生成AIを活用した当社図書館システム「ELCIELO」の仕組みの一例

生成AIを活用した当社図書館システム「ELCIELO」の仕組みの一例

 

当社では、以下のようなプロセスで図書館システムに生成AIを活用しています。

 

  1. 図書館利用者が質問文章を入力します。
  2. 質問文書をもとに生成AIが重要なキーワードを抽出します。
  3. 重要なキーワードを図書館システムが検索します。
  4. 図書館システムがデータベースに基づいた情報をアウトプットします。
    アウトプットされた情報を基に生成AIが回答を返します。

 

このプロセスのポイントは、初めからAIに全てを委ねるのではなく、図書館システムのデータベース(事実)に基づく情報を経由してAIの回答に根拠づけをし、あいまいさを取り除くことです。

 

このような生成AIの仕組みを活用した具体例な例としては、2024年5月より久喜市様で開始している実証実験があります。蔵書検索のOPAC画面で、本の題名が分からない時や、興味のあるテーマで書籍を探したいときなどに、AIで検索を支援する機能です。

関連記事:埼玉県久喜市立図書館、生成AI蔵書検索システムの実証実験を開始

検索支援AI

検索支援AI利用イメージ

覚え違いタイトルサポート

覚え違いタイトルサポート利用イメージ

 

更に、覚え違いタイトルのサポートも可能になります。利用者が「白い馬のホース」と間違ったタイトルを入力し、一致する書籍がない場合でもAIがその間違いを推測し、「スーホの白い馬」を提案してくれるようになる機能です。これらの機能は、利用者の利便性向上や、図書館職員様の業務負荷軽減に繋がると考えています。

図書館DXの今 ~ロボティクスDX

現在、自動撮影・蔵書点検ロボットは実用化を視野に課題解決を進めています。最新の実証実験では、人による蔵書点検で60分かかっていたものが3分で完了したという結果も得られています。

 

自動撮影・蔵書点検ロボットイメージ

 

さらに、返却本運送ロボットや配架場所案内など、利用者様サービスの向上や図書館職員様の業務負荷軽減の仕組みも検討を進めています。

 

図書館職員様の業務負荷軽減の取り組みイメージ

図書館DXの今 ~視覚支援DX

「視覚支援DX」の取り組みは、主にバーチャル図書館とバーチャル本棚が挙げられます。バーチャル図書館は、ウェブサイトにて図書館内の書架を仮想空間に表示しています。仮想空間の書架をズームし本を選択すれば、書誌情報の確認や、貸出予約なども可能です。

将来的には子供たちがアバターになり、友達と一緒にバーチャル図書館に来館するような使い方も実現できると考えております。

バーチャル図書館イメージ

バーチャル図書館イメージ

 

さらに、OPAC内での新たな取り組みとしてバーチャル本棚があります。おすすめリストごとに、専用の背景画像をカスタマイズしたり、装飾やポップをスタンプのように貼り付けることで、Web上に展示コーナーを再現することができます。物理的な本は必要なくなるので、展示上の見た目も変わらず、この画面から書誌情報の確認や予約も可能になります。この機能は、当社図書館システムELCIELOの今秋バージョンアップで実装予定です。

図書館DXの今 ~SDGs・アクセシビリティDX

取り組み1:オーディオブック

障害者も含めた「誰もが使える図書館」の実現に向け、当社ではいち早くオーディオブックを実装し、積極的な取り組みを行っています。

関連記事:オーディオブックは気軽に『聴けるコンテンツ』新しい図書館の利用法の提案

取り組み2:学校向けクラウド型図書館システム「ELCIELO for School

電子コンテンツ、図書館システム、蔵書管理を掛け合わせた新たなサービスを提供し、紙と電子のベストミックスを目指しています。

 

学校向けクラウド型図書館システム「 ELCIELO for School 」利用イメージ

 

取り組み3OPAC画面

当社のOPACは、大人とこども用のUIを利用者が選択できるようにしたり、入力機能を漢字とひらがなで切り替えができるなど、すべての人が利用しやすいようにアップデートをしてきました。今春より、NHKの「みんなのうた」のイラストやBook Meets Next2023「本の日」記念ブックカバー大賞を受賞されたクリエイターの斉藤みおさんのデサインをOPACに採用し、デザインを刷新しました。すべての利用者に視覚的にも分かりやすく、親しみやすいデザインを目指しています。

 

OPAC 画面イメージ

図書館DXで変革する”みらい”の図書館

これまで述べた4つの図書館DXを実践することにより、それぞれ以下のことが実現できると考えております。

 

  • 創造支援DXでは、AIを活用することで、選書やレファレンスなどより付加価値の高い図書館サービスを実現できると考えます。
  • 視覚支援DXでは、図書館利用の新しい視覚体験が実現することによって、利用者数増加が期待されます。
  • ロボティクスDXでは、職員の業務負荷を軽減し、読書支援にまつわる時間を創出できるようになり、より利用者に寄り添った図書館サービスが実現できると考えます。
  • SDGs・アクセシビリティDXでは、誰もが学べ、サステナブルな図書館を実現することができるようになります。

 

今後も、各省庁の方針を考慮しながら図書館DXを実践し、本・読書を通じて「生涯学習・社会教育」を変革し、社会に貢献していきたいと考えています。

 

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