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頻発する異常気象に伴う水害の対策:被害状況をリアルタイムでアラート発報する浸水/冠水検知センサの必要性

頻発する異常気象に伴う水害の対策:被害状況をリアルタイムでアラート発報する浸水/冠水検知センサの必要性

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目次


 

浸水とは? 冠水とは? 浸水と冠水の違い

近年、気候変動によって世界中で異常気象が頻発しています。日本でも台風や集中豪雨により、多くの地域で記録的な浸水や冠水が発生し、経済活動や多くの人々の生活に深刻な打撃を与えました。

 

【参考】国土交通省 気象庁 『浸水害』ext_link

 

道路や家が水に浸かってしまう災害(水害)を指す言葉として「浸水」や「冠水」などが使われます。これらは一般的に、どの場所が水に浸かっているかによって使い分けられています。

浸水

浸水のイメージ家屋や建物内が水に浸かる状況を指します。河川の堤防から水があふれたり、集中豪雨などによって排水が追い付かず家屋やその他の建築物が水に浸かる事象です。 「台風で家が床下浸水した」「船の底に穴が開いて浸水してきている」など、建造物や機械などの物(モノ)が水に浸かる状態を表しています。

冠水

冠水イメージ田畑や道路など、普段は水に覆われていない土地(主に屋外の地面)が水に覆われている状態を指します。 「洪水で作物が冠水被害を受けた」「道路が冠水した」などのように表現されます。

 

 

 

水害対策と課題

浸水被害の現状

日本の多くの河川は短く、また、急峻な地形に位置していることから、少量の降雨でも水位が急速に上昇しやすく、水害が発生しやすくなっています。都市部でも、近年、突発的な豪雨により排水が追い付かず、浸水被害の発生頻度と規模が増加しています。過去10年間では国内の98%の市町村にて水害、土砂災害が発生しました。

 

【参考】応用地質株式会社『目からウロコな防災メディア「防災・減災のススメ」』ext_link

異常気象と水害対策

異常気象は、予測が難しく突発性も高いため、水害対策としては事前の準備が不可欠です。従来から行われている水害対策として、河川の堤防の強化や拡張、排水機能の向上、調節池の設置などがあります。また、避難計画の策定だけでなく、誘導計画の策定、水位計や河川ライブカメラなどによる水害状況の把握や水害情報の迅速な発信、地域住民への防災教育も積極的に行われてきました。これらの対策は、一定の効果を挙げてはいますが、未だに多くの課題が残されています。たとえば、堤防や排水設備の設計が古く、現在の気候状況に適合していないことが挙げられます。

 

【参考】国土交通省 『河川機械設備における現状と課題』ext_link

 

また、下記のような課題点も挙げられます。

  • 急激な都市化による地形の変化や、排水施設の老朽化により、極地的な集中豪雨など気候変動に排水能力が追い付かない
  • 旧来のセンサやライブカメラなどの導入コストが高額で2級河川以下の水位監視などが不十分
  • 浸水状況の把握は人の巡回などに頼っている部分が多く地方公共団体の地域の浸水状況を面として捉えにくい

浸水/冠水検知の重要性

浸水/冠水検知センサとは?

浸水/冠水センサの動作イメージ画像浸水/冠水検知センサは、水位が異常に上昇していることを検知するための装置です。これらのセンサは、河川付近や道路、アンダーパスなどの地点に設置され、水位の上昇をほぼリアルタイムで監視することができます。検知されたデータは通常、監視システムに送信され、即時の分析と対応が可能となるため、迅速な避難指示や対策の立案に役立ちます。

浸水/冠水検知センサの分類

浸水/冠水検知センサの分類は下記の通りです。

 

▼ 検知方式

  検知方法
電極式 電極が水に触れて電気が流れることで検知
音波式 センサの音波が水面に反射する時間で検知
電波式 センサの電波が水面に反射する時間で検知
圧力式 増水による水の重さ(圧力)で水位を検知
接触式 センサ自体が直接水に触れることで検知
フロート式 水に浮かべた浮き(フロート)の位置で検知

 

▼ 通信方式 (データ送信方法)

  通信方式 通信コスト 消費電力
LTE 高速データ転送(数百Mbps)、低遅延な長距離通信方式。無線局免許が必要なライセンスバンド ×(高) ×(大)
LPWA 低速(100bps程度)な長距離(数十キロメートル)無線通信。公衆網の通信環境を利用 〇(低) 〇(小)
Bluetooth 中速(数Mbps)、短距離(数十メートル)無線通信 〇(小)

 

浸水/冠水検知システムとは?

浸水/冠水検知システムは、複数の検知センサからのデータを受け取り、分析、状況の把握、避難誘導や被害状況の把握に役立てるシステムです。このシステムはセンサからのデータを集約し、水位の異常を検出した際には、自動的に警報を発することができるものがあります。また、システムは地理情報システム(GIS)と連携して、浸水予測や被害予測マップの生成に利用することも可能です。これにより、具体的な対策の計画と実行が可能になり、防災活動の効率が大幅に向上します。

国土交通省の取り組み「ワンコイン浸水センサ実証実験」

国土交通省では、低コストで効率的な浸水検知システムの普及を目指して、「ワンコイン浸水センサ実証実験」を行っています。この実験は、一般的な浸水センサよりもはるかに安価なセンサを用いて、広範囲にわたる検知ネットワークを構築することを目指しています。ワンコイン浸水センサは、その名の通り、非常に低価格で製造され、多くの場所に容易に設置できるため、地方公共団体でも導入しやすくなっています。この取り組みにより、広範囲での早期警告システムの実現が期待されています。

 

国土交通省による浸水情報の活用イメージ。センサを企業や地方自治体等と連携して設置し、情報を収集・共有する仕組みを構築している。

 

【参考】国土交通省『ワンコイン浸水センサ実証実験』 ext_link

 

【参考】加古川市プレスリリース『「ワンコイン浸水センサ」を用いた広域防災の実証」』ext_link

利用例・ユースケース

浸水/冠水検知センサは、地方公共団体、保険会社、不動産会社など多様な分野での活用が可能です。以下にそれぞれの分野での具体的な活用例を説明します。

地方公共団体

地方公共団体における浸水/冠水検知センサの利用は、主に市民の安全確保と災害対応の迅速化に焦点を当てています。例えば、河川や下水道、道路などにセンサを設置し、リアルタイムでデータを収集します。これにより、洪水や台風時の早期警報システムを構築し、住民への避難勧告のタイミングを最適化することができます。また、過去のデータ分析からリスクエリアの特定や防災計画の改善にも寄与します。

センサの設置により土地のリスク評価が可能となるため、今後下記事業分野で役立てられる可能性があります。

 

【参考】 国土交通省 『二級水系中村川 流域治水 緊急対策(2023年3月20日)』ext_link

保険業界

保険会社では、浸水/冠水検知センサを活用してリスクアセスメントを行うことが可能です。洪水時の被災者向け保険の計算や保険金の支払いにおいては、具体的なデータに基づく正確な評価が求められます。センサからのデータを利用することで、特定地域の浸水リスクを定量的に評価し、保険商品の価格設定や条項設計に役立てることができます。
また、災害発生時の損害評価にも役立ち、顧客への迅速な対応が可能となります。
加えて、こうした情報を他の企業、団体にも提供することで、社会全体のレジリエンス向上にも貢献できます。

 

【参考】東京海上日動火災保険株式会社、東京海上レジリエンス株式会社『浸水の即時把握を可能とする水災対策ソリューション「リアルタイムハザード」の提供開始』ext_link

不動産業界

不動産会社は浸水/冠水検知センサを利用することで、主に物件の価値評価と顧客への情報提供が可能になり、浸水リスクの高いエリアにある物件の評価時には、センサデータを参考にしてリスクを加味した価格設定を行うことができます。
また、物件の販売や賃貸契約の際には、実際の浸水履歴やリスクデータを顧客に提供することで、透明性の高い取引を促進し、顧客信頼の向上に寄与します。地方公共団体や地域社会などへの情報提供により、社会的責任を果たすこともできます。
さらに、不動産開発時の計画段階でこれらのデータを活用し、将来のリスクを回避するための設計に役立てることも可能です。

これらの利用事例やユースケースからわかるように、浸水/冠水検知センサは、災害時の対応だけでなく、事前のリスク管理や計画、価値評価においても極めて有効なツールです。各業界での積極的な利用が、より安全な社会の構築やビジネスリスクの軽減につながり始めています。

まとめ

異常気象が日常となりつつある今日、浸水や冠水状況を把握することは、水害対策のために不可欠です。浸水/冠水検知センサを広範囲にわたって戦略的に設置することにより人的リソースをかけずにリアルタイムで水位や降水量を監視できるようになります。これらの取り組みにより、住民への情報提供と共に、早期の警報発報により迅速な避難指示を出すことが可能になります。また、旧来の水位計やライブカメラと比べて導入から運用コストを圧縮することもでき、経済的な負担を軽くすることが可能です。
このように、浸水/冠水検知センサの導入により、私たちはより迅速かつ効果的に、点ではなく面で災害に対処することが可能になります。今後も技術の進化と共に、センサの普及を促進することが重要となっています。

   

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